遺伝子療法の安全性に警告、AAVベクターの高用量投与に副作用か
遺伝子療法で大量のウィルス粒子を投与すると、深刻な免疫作用を引き起こす可能性があることを、ペンシルベニア大学のジェイムズ・ウィルソン教授が動物実験で確認した。高用量の投与を用いる遺伝子療法の研究はまだ始まったばかりであり、科学者は慎重な姿勢を求められる。 by Antonio Regalado2018.02.20
ボランティア被験者が死亡するという、遺伝子療法が19年前におかした最大の失敗に関与した有力な科学者が、遺伝子置換療法の危険性に関する驚くべき警告を発した。
ペンシルベニア大学のジェイムズ・ウィルソン教授は1月末に、遺伝子療法で非常に高用量の投与を受けたサルとブタが相次いで死亡したり憂慮すべき状態に陥ったりしたと報告した。
「注目すべき点は、そういったことはこれまで見られなかったということです」とウィルソン教授は述べている。「実験結果に驚きましたが、驚くべきことでもないのかもしれません。どのようなものも高用量を投与すれば毒性を示すようになります」。
この警告メッセージは、サレプタ・セラピューティックス(Sarepta Therapeutics)、ファイザー(Pfizer)、ソリッド・バイオサイエンス(Solid Biosciences)の3社が、遺伝子療法を用いた筋ジストロフィーの治療を最初に実現しようと競い合っている真っただ中で出された。筋ジストロフィーは男児に発症し、筋肉が萎縮し、20代までに死に至る病気だ。
遺伝子療法による筋ジストロフィーの治療では、研究者は正しい遺伝子のコピーを持つウイルス粒子を患者に投与することで、患者の欠損のあるジストロフィン遺伝子のコピーと置き換える。男児の体の中にある数え切れないほど多くの筋細胞に到達させるには、体重1キロ当たり約900兆個以上という非常に高用量のウイルス粒子が必要となる。
その投与量の多さが危険性をもたらす可能性があるとウィルソン教授は述べる。これほど投与量が多いと、2つの異なるウイルスが、肝臓と血管の損傷などの突然の深刻な免疫作用を引き起こすことをウィルソン教授の研究チームは見い出した。
この報告によって、遺伝子治療を開発する企業の株価は下落した。ウィルソン教授の研究結果に関連するウイルスの一般型はAAV(アデノ随伴ウイルス)と呼ばれ、広く使用されており安全であると考えられている。これまで2000人以上の人がAAVを用いた治療を受けており、失明の遺伝子療法および血友病の遺伝子療法の試験で成功を収めている。
こうした成功例のおかげで、遺伝子療法の研究は急速に進展し、より劇的な治癒の実現に向かっていた。最近実施されている試験は、(筋細胞や脳細胞に到達 …
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