KADOKAWA Technology Review
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遺伝子療法が「超高額」でも事業化できないシンプルな理由
Maxwell Hamilton | Flickr
生命の再定義 Insider Online限定
The gene therapy that cures “bubble boy disease” isn’t worth it to Glaxo

遺伝子療法が「超高額」でも事業化できないシンプルな理由

医薬品大手のグラクソ・スミスクラインは、ストリムベリスなど新薬候補の遺伝子療法を、事実上の競合となるスタートアップに企業に売却した。希少な疾患に対して1回完結型の治療を提供する遺伝子療法は、一見すると法外に思える値段を付けても、ビジネスとして成り立たせることは困難だ。 by Antonio Regalado2018.05.11

4月上旬、ゴールドマン・サックスのあるアナリストが、遺伝子療法について厄介な質問を投げかけた。

「患者を治すことは持続可能なビジネスモデルと言えますか?」

ソーシャルメディア上の反応は非常に素早く辛辣だった。「冷酷で非道徳的」とか、「資本主義の最たるものだ」といった意見が相次いだ。

だが、アナリストの言うことにも一理ある。1回完結型の治療から儲けを出すのは並大抵のことではない。

少なくともある医薬品大手の質問に対する回答は、「いいえ」である。

グラクソ・スミスクライン(Glaxo SmithKline:GSK)は4月12日、新薬候補の遺伝子療法のいくつかを、オーチャード・セラピューティクス(Orchard Therapeutics)というロンドンのスタートアップ企業に売却した。オーチャード・セラピューティクスの株の20%と引き換えである。

グラクソにとってもはや不要となった治療は、善意の奇跡だった。破損した遺伝子を一度だけ交換すれば治療は完了し、患者の命が助かるのだから。

売却したうちの1つは、希少な免疫障害のための遺伝子療法であるストリムベリス(Strimvelis)だ。同療法でこれまでに何人かの子どもたちが治癒している。

ほかにもまだ開発中のものとして、異染性白質ジストロフィーと呼ばれる幼少期の悲惨な疾患を治 …

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MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
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