KADOKAWA Technology Review
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Governments Around the World Deny Internet Access to Political Opponents

世界のインターネット接続
反体制派地域で普及せず

「敵対民族にインターネットを与えるな」政策は、反体制派の機運を削ぐ。 by Mike Orcutt2016.09.09

自分が住んでいる国で、自分の民族が政治権力を持っているかどうかは、その人がインターネットに接続できるかの決定的要因であることが、新しい分析で判明した。

因果関係は国によって異なり、民主主義国ではあまり関係がない。しかし、8日にサイエンス誌で発表された研究結果によれば、検閲以外にも、政府に敵対的なグループがオンラインで組織化することを防ぐために、まず、政府はインターネット接続を拒否する、とコンスタンチン大学(ドイツ)のニルス・ワイドマン教授(政治学)はいう。

インターネット接続は個人の社会経済的な状況と、居住国の発展度に明確に関係している。個人の社会経済的状況と発展度は、世界中に「情報格差」をもたらす。だが、新たな分析でワイドマン教授と共同執筆者は、未解明の要因にも光を当てようとした。民族間の政治的分断だ。

そこで研究グループは、まず、個々の国の地域によって異なるインターネット接続を示す地球規模の地図を新たに作成した。多くの国、特に独裁国家では「国家より小さな単位のデータ」はなかなか見つからないか、単純に入手不可能だった、とワイドマン教授はいう。そこで研究グループは、世界中の大量のトラフィックを処理しているスイスのインターネットサービスプロバイダーからのデータと、世界中のインターネット経路システムを追跡しているデータベースの情報を使って「サブネットワーク」(たった数百のIPアドレスに対応する小単位のインターネット)の地球規模のデータベースを作成した。研究グループは地理情報データベースにより、サブネットワークの場所を地図上にプロットした。上の地図の黄色い点は、2012年時点の世界中のアクティブなすべてのサブネットワークを表す。

次に研究グループは、民族勢力関係リスト(世界中の民族グループの自国における政治的関係性を、政治的に「包摂」されているか「阻害」されているかで区別し、分類したデータベース)を使って、個々の民族グループが定住する地点を示す地理情報と紐付けて、インターネット普及率と政治権力がどう関係しているかを判定した。(なお、約3分の1の民族グループは、分析対象に含めるには位置情報がまばら過ぎるので除外している)

その結果、研究グループは、阻害された民族グループのインターネット接続は、政治的に包摂されたグループ に対して極めて低く、その要因は、他の経済的、地理的要因(たとえば、居住しているのが非都市部か都市部かなど)では説明できない、と結論づけた。ワイドマン教授は、研究結果によって、政府がいかにインターネット利用を支配しているかの理解に新たな面が加わった。という。「敵対勢力にインターネット接続がまったくなければ、検閲する必要もない」のだ。ワイドマン教授は、人道的な理由でインターネット接続を拡大しようと考えている組織は、このことを胸に刻み、政治的不平等を助長しないように注意しなければならない、という。

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クレジット Map by Nils B. Weidmann, background from Natural Earth
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
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