二酸化炭素の大気回収で再生可能エネは不要になるか?
米国で今年2月、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)に対する税控除が拡大された。オバマ政権下でCCSテクノロジーを推進していたフリオ・フリードマン博士は、今後、大気中からの二酸化炭素の回収も現実的になるとの見方を示している。 by James Temple2018.06.20
温室効果ガスの排出が現在のまま進んだ場合、2021年までに1.5℃の温暖化という結果が世界に訪れるかもしれない。カーボン・ブリーフというWebサイトの分析によるものだ。私たちは、2036年までに気温が2℃上がる道を一歩ずつ歩んでいる。
この恐ろしい気候変動の計算結果を前にした多くの研究者は、地球温暖化の危険を減らす現実的な対策として、発電所または工場から排出される、またすでに大気中に存在する二酸化炭素を回収しなければならないと論じている。
経済的に可能であれば、二酸化炭素の回収・貯蔵(carbon capture and storage:CCS)によって、世界は追加的な柔軟性と、よりクリーンなシステムを作るための時間を得られる。地球規模のエネルギー基盤の主要な部分を、別のものに置き換えるのではなく、維持しながら改良できるだろう。地球温暖化が破滅的なレベルに達した場合、二酸化炭素のいわゆる「大気回収」(direct air capture)は、数少ない対策の1つになる。回収しない限り、二酸化炭素は大気中に何千年もとどまるからだ。
フリオ・フリードマン博士はCCSテクノロジーの熱心な主唱者の一人として知られる。フリードマン博士はオバマ政権の米エネルギー省化石燃料エネルギー局で、クリーンな石炭利用と二酸化炭素捕捉の研究開発を監督していた。また、グローバルCCSインスティテュート(Global CCS Institute)、エネルギーの未来のためのイニシアチブ(Energy Futures Initiative)、大気中の二酸化炭素を回収する試験プラントを建設しているスイスのクライムワークス(Climeworks)と共同研究したりアドバイスをしたりしている。
MITテクノロジーレビューのインタビューでフリードマン博士は、二酸化炭素回収技術が転換点に近づいていると語った。関連プロジェクトの増加は、二酸化炭素回収技術が現実世界で機能し、より信頼できる、より購入しやすいものになってきていることを示している。2018年前半、連邦予算の一部として「未来法(Future Act)」が議会を通過し、二酸化炭素の回収と貯蔵に対する税控除が拡大された。この税控除は関連プロジェクトをさらに増加させ、関連商品が新しい市場を形成する後押しとなるだろう(「採算にめど、二酸化炭素貯留テクノロジーがついにやってくる」を参照)。
しかし深刻な課題が残っている。税控除を計算に入れても、企業は既存の発電プラントに二酸化炭素回収システムを設置する急峻なコストを背負い込むことになる。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者ハワード・ハーツォグが共同執筆し広く引用されている2011年の論文によれば、大気回収には莫大なエネルギーが必要で、発電所から出る二酸化炭素を取り除く10倍の費用がかかる。
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——2018年2月下旬に、ミディアム(Medium)への寄稿において、二酸化炭素の回収・貯蔵への税控除を増やすことで我々は「気候変動へのカウンターストライクを繰り出した」と書いていらっしゃいます。なぜ、税控除が大きなことなのでしょうか?
実際のところ、税控除は二酸化炭素の公式な価格を決めることになります。二酸化炭素を排出しないことに対してお金が支払われ、その額は1トンあたり35~50ドルです。これはすでに巨大な変化です。それに加え、次の3つのどれかを選べます。二酸化炭素を貯蔵する、二酸化炭素を石油回収の増強に使う、またはその現金化です。未来法は根本として、二酸化炭素を出さないことに価値があると言っているのです。
これまで私が何度も述べてきたように、今日までCCSの採用が進まなかったのはコストが原因ではありません。それは実はファイナンスの問題でした。
「未来法」がファイナンスを創造します。私が確認した未来法の追加条項に …
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