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世界を支配する「データ王」
GAFを止めるのは誰か
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It’s time to rein in the data barons

世界を支配する「データ王」
GAFを止めるのは誰か

グーグル、アマゾン、フェイスブックの巨大ネット企業3社による支配が進んでいる。世界中から膨大なデータを収集し、カネに変えるデータ王を止める方法はあるのか。 by Martin Giles2018.08.16

2018年4月、米国連邦議会に出席したフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、現在は業務を停止(その後廃業)している政治データを扱う企業、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)がユーザーの確認も同意もないまま、どのように最大8700万人分のユーザー・データを入手したのかを説明した。数少ない鋭い質問の1つは、サイスカロライナ州選出の共和党上院議員、リンゼイ・グラハムからだった。「最大の競合会社はどこですか?」。グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトはすべてフェイスブックのさまざまなサービスや製品と競合している、とザッカーバーグCEOが答えると、グレアム議員は苛立った。

「もし私がフォードの車を買って、それがうまく動かず、気に入らなかったとしましょう」と上院議員は念押しした。「それなら、シボレーを買えばいいことです。でも、もしフェイスブックが気に入らないとしたら、代わりにサイン・アップできる代替サービスは何になると思いますか」。少し後で、彼は再び同じテーマに戻り、ザッカーバーグCEOはフェイスブックがソーシャル・ネットワークを独占していると思うかと質問した。ザッカーバーグCEOは「もちろん、そのようなことは思っていません」と語った。

しかし多くの人は、フェイスブックはソーシャル・ネットワークを独占していると考えている。20億人以上のユーザーがいるフェイスブックは強大であり、ツイッターやスナップチャット(Snapchat)を圧倒している。アマゾンやアルファベット傘下のグーグルと共に、フェイスブックはインターネット業界を支配している。アップルとマイクロソフトもこれらの巨大企業と同様に語られるが、マイクロソフトは事業内容が多様でインターネットへの集中度が低く、アップルの場合は携帯電話などのデバイスが中心だ。

他にも重要な違いがある。フェイスブック、グーグル、アマゾンはすべて、ユーザーに関するデータを大量に集めてアルゴリズムを強力にする必要があるビジネス・モデルを採用しており、企業力はその情報に依存している。この3社が際立っているのは、収集したデータの量と精緻化により巨大帝国を築いたことだ。

ここ10年ほどで、3社は比較的スムーズにトップに上り詰めた。サービスは実に豊富で、しかも多くは無料で提供されているので、途方もない人気を得て、世界トップクラスの利益を上げる企業になった。2018年5月末の3社の時価総額を合わせると約2兆ドルになり、イタリアの国内総生産(GDP)にほぼ等しい。だが現在、大西洋を挟んで、これらの企業の市場支配にどのように対処するべきか、本格的な論議が始まっている。

デジャヴだが、違いもある

テクノロジーの歴史には、これまでにも著しく強大な企業はあった。IBMがメインフレームで収めた成功や、マイクロソフトがパソコン時代に築き上げた疑いようもない支配力を考えて欲しい。ただし今回違っているのは、インターネットの巨大企業が日常生活の多くの部分に及ぶきわめて大きな影響と、そこから生まれる問題だ。

ケンブリッジ・アナリティカ事件は、フェイスブックを長らく悩ませてきた多くのデータ・スキャンダルの最新例でしかない。2009年、フェイスブックはユーザー情報をユーザーの許可なく公開した。その数年後には、フェイスブックの研究者は約70万人が見るニュース・フィードへの掲載ニュースを故意に操作し、操作されていることを知らないユーザーにどのような影響を与えるかのテストをしている(もちろん、ユーザーは動揺した)。グーグルもプライバシー侵害をしている。2012年、アップルのWebブラウザー「サファリ(Safari)」のデフォルト設定を回避して、ユーザーに気づかれることなく広告追跡のためのクッキー(Coookie)をインストールした件で、米国の規制当局から罰金を科されている。

これらの出来事はそれぞれ単独に見えるかもしれないが、大きな枠にぴたりとはまっている。20世紀終わり頃の石油王のように、データ王は自分の時代の経済の中心になっている資源から利益を可能な限り絞り出そうという固い意志を持っている。3社のターゲティング広告マシンや商品推奨エンジンのアルゴリズムは、情報量が多ければ多いほどうまく働く。個人データの扱いについて、熾烈な競争やヨーロッパの「一般データ保護規則(GDPR)」のような厳しい法的規制がなければ、彼らはできる限りのユーザー・データを集めるためプライバシーを侵害し続けたであろう。

支配的地位にあることから、インターネット界の巨大企業3社は政治・文化において、危険かつ並外れて大きな役割を演じている。ロシアによる荒らしやマケドニアのフェイク・ニュース集団など、プロパガンダ提供者の脅威を過小評価することで、民主主義への信頼を損なってきた。当初、ザッカーバーグCEOはフェイスブック上の偽情報が2016年の大統領選挙に影響を与えたとの指摘を「まったく馬鹿げている」と撥ねつけた。だが現在、フェイスブック自身が、2015年6月から2017年8月の間に、フェイスブックに掲載されたロシアのネット荒らしグループが作成したコンテンツを1億2600万人もの人が目にしたことを認めている。

フェイスブックとグーグルは、偽情報を識別し、広告主を厳しく吟味する新しいツールを構築したが、どの程度有効なのかはまだ明らかではない。明らかに偽情報かどうか分からないニュースについて、フェイスブックのコンテンツ推奨アルゴリズムは人々の偏見を増強するような内容を掲載する傾向があると、研究者は指摘している。この点に関しては、仮にソーシャル・ネットワーク業界がもっと細分化していたとしても同様のことが起こっていたかもしれない。しかし、フェイスブックのように人々に深く浸透したプラットホームは、間違いなくこの衝撃を増大させている。世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2017年に発表した報告書によれば、現在、米国の成人の45パーセントはニュースを少なくとも部分的にフェイスブックから得ている。

さらに、築き上げた大きな市場支配力を持つフェイスブックは、一部の業界で混乱を起こし、フェイスブックが支配している分野ではイノベーションが抑えられてしまっている。フェイスブックとグーグルはデジタル広告を独占している。米国ではデジタル広告に使われる金額の4分の3はこの2社が得ており、中国を除く世界のデジタル広告支出シェアの84パーセントを得ている。グーグルは米国の検索広告収入シェアの80パーセント近くを得て、多くの外国でも巨大なシェアを占めている。

一方、アマゾンは米国の電子書籍販売シェアの83パーセント以上を、オンライン出版販売では90パーセント近くを占めている。3社の市場支配は、マスコミや出版業界を混乱に落とし入れた。2006年から2016年の間に米国の新聞への広告出費は3分の2近くも減り、その金額の多くはフェイスブックとグーグルに流れた。アマゾンも多くのオンライン販売の入り口を強力に握り、2017年は米国の全電子商取引の約44パーセントを扱った。

3社のプラットホームは、ユーザーが何を見て、何を読み、何を買うかについて、これまでなかった支配力を持った。南カリフォルニア大学アネンバーグ・イノベーション研究所(Annenberg Innovation Lab)のジョナサン・タプリン名誉所長は、巨大インターネット企業の支配力について論じた自著『Move Fast and Break Things』(2017年刊、未邦訳)で、反社会的なアーティストたちは、これまで長い間、アーティストの仕事を分配する「スーツを着た連中」と付き合わなければならなかったと論じて …

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