KADOKAWA Technology Review
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Is an Editable Blockchain the Future of Finance?

編集可能なブロックチェーン
アクセンチュアが特許取得

巨大金融機関の採用を目指すブロックチェーンの改良版は、原理主義者には歓迎されないとしても、テクノロジーの普及には欠かせないことかもしれない。 by Jamie Condliffe2016.09.21

暗号通貨「ビットコイン」を支えるテクノロジー「ブロックチェーン」は、あらゆる種類の取引を変える手法として、もてはやされている。しかし今、編集可能なブロックチェーンを作成する提案が議論を呼んでいる。

コンサルタント会社のアクセンチュアが取得した特許は、管理権限を持つ者がブロックチェーンに保管された情報を書き換えられるシステムの基本的アイデアだ。 フィナンシャル・タイムズ紙によるインタビュー (有料会員限定記事)では、アクセンチュアの財務サービスのリチャード・ラム(グローバル統括責任者)が、このシステムの開発は「ブロックチェーンを金融サービス分野で役立つ、実用的なものにする」ため「企業の世界に適応させる」ものだと述べている。

アクセンチュアが作ろうとしているのは、いわゆる許可型ブロックチェーンだ。招待を受けて初めてテクノロジーを実装できるため、現在複数の銀行が関心を持っている。逆にビットコインのような許可不要のブロックチェーンは、編集できないがゆえに、改ざん不可能な取引記録が提供される、という事実で成り立っている。ただし、アクセンチュアは、純粋なブロックチェーンには面倒な間違いが修正されないまま残る可能性があるため、編集不可能なシステムは「特殊な状況」でのみ利用できるものだ、と主張している。

もっとも、こうしたアイデアはブロックチェーンの原理主義者から不興を買っている。 ロイター通信の取材に答えたコンサルタント会社ディスリティクスのゲイリー・ナトールは、「編集可能なブロックチェーンなんてただのデータベースでしょう。ブロックチェーンの真価は変更不可能性にあるのですから、アクセンチュアのやっていることはブロックチェーンを駄目にするだけです」といった。

だが、編集の記録までなくなることはなさそうだ。法律上、金融機関は取引記録を完全な形で残しておく義務がある。後々の調整のために関係者しか閲覧できない状態にとどまるとしても、おそらく編集記録は何らかの形で保持されるはずだ。

企業がブロックチェーンのアイデアにひねりを加えようとするのはこれが初めてではない。多くの銀行がビットコインの技術的な機構に魅力を感じているらしい一方、たとえば、こうした機構を大きく変えるような方法も開発している。取引のシステムを高速化するため、また複数の通貨をスムーズに取り扱うためにプライベートなブロックチェーンを使うのも、その一例だ。

アクセンチュアの特許取得のニュースは、どのようなテクノロジーでも進化しうるし、進化させなければいけないことを思い出させてくれる。ブロックチェーンの本質に手を加える行為は、初期からこのテクノロジーに関わっていた人々を苛立たせるかもしれない。だがこうした動きは、ブロックチェーンが技術好きの保護からひとり立ちし、世界中の銀行で利用されるシステムへと成長するために必要なことだろう。

(関連記事:Financial Times, Reuters, “Banks Embrace Bitcoin’s Heart but Not Its Soul,” “Why Bitcoin Could Be Much More Than a Currency”)

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ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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