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中国がぶち上げる壮大な
「大陸横断」送電網構想
気候対策の切り札になるか
Franziska Barczyk
カバーストーリー Insider Online限定
China’s giant transmission grid could be the key to cutting climate emissions

中国がぶち上げる壮大な
「大陸横断」送電網構想
気候対策の切り札になるか

11億人の顧客を抱える巨大な中国の送電企業は、世界的な超高圧送電線の整備を目指している。再生可能エネルギーを融通することで気候変動に対抗するのが目的だというが、その真意はどこにあるのか。 by James Temple2019.03.25

2018年1月前半、中国・安徽(アンホイ)省の東端で中国人作業員が天にもそびえる紅白の送電用鉄塔の組立てを始めた。作業員たちは金属管にまたがると、揚子江の南岸の上空に吊り上げられた金属管を格子状に連結していく。

米国企業が50万ボルト超の送電設備の建設に苦心しているときに、中国の作業員たちは世界初となる110万ボルトの送電設備の重要部分である送電用鉄塔を建てていた。以前は国有の公益事業会社だったステート・グリッド(中国国家電網、State Grid Corporation of China)のこのプロジェクトが2019年に完成すると、送電線は北西部の新疆ウイグル自治区から東部の安徽省まで延び、内陸奥地の発電所と太平洋岸の諸都市を接続できる。

この送電線は大規模な発電所12カ所分の電力を3200キロメートル近く離れた場所まで送れる。現在までに建設されたどのような送電設備よりも50%多い電力をおよそ1000キロメートル遠くまで送れる計算だ(高電圧線はより遠い地域まで、より少ない損失で電力を送れる)。このプロジェクトに設備を納入しているある外国企業は、この送電線は北京からタイ・バンコクまで送電できると自慢するが、偶然にもこの表現はステート・グリッドの野望の高まりを暗示している。

ステート・グリッドは当初、不規則に広がった各都市で膨れ上がっているエネルギー需要に対応するために超高圧送電設備を開発・建設した。各都市が高い山や途方もない遠方にあるせいで孤立し、石炭、水力、風力、太陽光などの発電源から隔てられていたからだ。しかし現在、ステート・グリッドが達成を目論む目標ははるかに大掛かりだ。隣接国家の電力システムと接続することで、国境を超えた大陸横断の「スーパー送電網」を構築しようというのだ。

この巨大な送電網のおかげで風力や太陽光のように再生可能ではあっても変動の大きい資源による電力が、中国や隣接諸国で使われる電力の大きな割合を占めることが可能になり、その結果、炭素排出量を削減できるかもしれない。送電距離が長く、容量の大きい送電設備なら、ある時間帯の地域で太陽が沈んで暗くなっても、別の離れた地域からの風力・水力・地熱エネルギーなどで補完できる。

世界の多くの地域では、政治や官僚主義が邪魔をして、このような巨大で現代的な送電網の展開は不可能だった。米国では、送電用鉄塔、送電線、地下管を、連邦・州・郡・私有の土地に通すための認可を得るだけで10年以上かかるかもしれない(仮に認可が得られればという可能性の薄い話ではあるが)。

「長距離送電網の相互接続は気候問題に対する大きなステップになります」。元米国エネルギー省長官のスティーブン・チューはこう話す。チュー元長官は現在、ステート・グリッドが国際的な送電網接続のために2016年に設立した非営利組織の副会長として働いている。「中国は、現在の米国のように過去のしがらみにとらわれることなく『これらの将来的なテクノロジーのすべてにおいて世界のリーダーになるつもりだ』と言っています」(チュー元長官)。

しかし、再生可能エネルギーの利用を増やすことは、中国の唯一の目的どころか重要な目的ですらないことは明らかだ。送電インフラは、開発プロジェクトと貿易関係を数十の国家間で構築しようという数兆ドル規模の「一帯一路」構想の戦略プロジェクトの一部だ。中国の超高圧送電線を世界中に延ばせれば、増大する経済力、技術力、政治力をあまねく広げられるのは確実だ。

3万7000kmの電線

ステート・グリッドはおそらく、これまで耳にしたこともない規模の巨大企業だ。従業員は100万人近く、顧客は11億人にも達する。同社の発表では売上が3500億ドル、利益は95億ドルで、2017年のフォーチュン誌の「フォーチュン・グローバル500」で、世界第2位の規模の企業となった。

ステート・グリッドはブラジルに海外で初めて(そしていまも唯一)の超高圧送電設備を建設し、すでに当地最大の電力配送会社だ。またステート・グリッドはオーストラリア、ギリシャ、イタリア、フィリピン、ポルトガルでも送電会社への投資を急増させている。一方、エジプト、エチオピア、モザンビーク、パキスタンでは大規模プロジェクトを進めており、その他の欧州の公益会社の株式取得も継続している。

「中国には、海外進出に非常に意欲的な会社がたくさんあります」と話すのは、米国のシンクタンク、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA:Institute for Energy Economics and Financial Analysis)で中国企業の投資を追跡した報告書の共著者、サイモン・ニコラスだ。「しかし、ステート・グリッドは別格です」。

ステート・グリッドは2002年後半に中国政府が巨大な独占企業、国家電力公司(State Power Corporation of China)を11の発電・送電会社に分割したときに設立された。規制当局による会社分割の際に、急増するエネルギー需要に対応し、頻発する停電を食い止めるため、企業間の競争を取り入れ、経済発展の促進のために計画された。しかし、そうして生まれた2つの送電会社のうち、ステート・グリッドは他方よりもはるかに大きく、中国の90%近くで実質的に独占状態にある。

2004年に中国共産党は、山東省電力局の前 …

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