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遺伝子編集が救えるのは
「金になる」病気だけなのか
Stephanie Arnett/MITTR | Envato
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Forget designer babies. Here’s how CRISPR is really changing lives

遺伝子編集が救えるのは
「金になる」病気だけなのか

遺伝子編集ツール「クリスパー(CRISPR)」を利用して遺伝性疾患を治療する臨床研究が進んでいる。年内にも米国で最初の治療法が承認される可能性があるが、商業的な動機から、対象疾患が著しく偏っている。 by Antonio Regalado2023.03.16

遺伝子編集ベビーを生み出した中国人研究者、賀建奎(フー・ジェンクイ)のことはもう忘れよう。その代わりに、遺伝子編集について考えるときは、鎌状赤血球症が治癒したというアフリカ系米国人女性、ヴィクトリア・グレイのことを思い浮かべよう。

3月6日から8日にかけて、英国ロンドンで、第3回ヒトゲノム編集国際サミット( International Summit on Human Genome Editing)が開催されている(日本版注:この記事のオリジナルは3月8日に公開された)。遺伝子編集の研究者にとっての一大イベントであるこのサミットでは、研究者らがDNAを改変する新しい技術で聴衆を驚かせ、倫理学者らはそれが何を意味するかについて悩むことになる。

このイベントは3月6日、遺伝子編集技術の「悪用」事例を振り返ることから始まった。2018年に中国でデザイナー・ベビーを作るためにこの技術が使用された事件だ。この事例は明らかに倫理に反した大惨事であり、進化に対する人為的な干渉の是非を問う深刻なものだった。

だが、デザイナー・ベビーの議論は、遺伝子編集が、深刻な病気を抱える患者への治療法として、いかに人々の人生を変えているかという事実から目を逸らしてしまう。

実際、ハーバード大学の遺伝子編集専門家であるデイヴィッド・リウ教授の集計によると、がん、HIV、血液疾患などさまざまな疾患を治療するため、ヒトの治験ボランティアに遺伝子編集を使用する実験的研究が現在、50件以上進行中だという。

これらの研究の大部分(約40件)では、クリスパー(CRISPR)が使われている。わずか10年前に開発され、遺伝子編集技術の中で最も汎用性が高い技術だ。

そこで登場するのがグレイだ。2019年にCRISPR治療を受けた最初の患者の一人であるグレイは、ロンドンのサミットで演壇に立ち、会場を涙で包んだ。

「私は今日、『奇跡はまだ起こるのだ』ということの証明として皆さんの前に立っています」。グレイは、異常な形状の赤血球が酸素を十分に運ぶことができず、重度の疼痛や貧血を引き起こす鎌状赤血球症との闘いについて、そう語った。

だが、グレイの事例は、「CRISPR 1.0」とも呼ばれるCRISPR治療の第一世代が直面する障害も示している。CRISPR治療には莫大な費用がかかり、高度な手技を要する難しいものであり、改良された次世代の遺伝子編集薬にすぐに取って代わられる可能性がある。

グレイの治療法を開発しているバーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)によると、鎌状赤血球とその関連疾患であるβサラセミアの研究で75人以上を治療している。治療法は年内に米国で承認される可能性があるといい、初めて上市されるCRISPR治療法として関係者の期待も高まっている。

バーテックス・ファーマシューティカルズは、この治療法を受けるために必要な費用について明らかにしていないが、数百万ドルと予想されている。

革新的技術

研究者らによると、この技術が医療への応用へ進むペースは、驚 …

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