145%の関税か、次世代エネ技術か:米国が選ぶべき真の「覇権」
エネルギー覇権を米国が握るには、単なる関税では不十分だ。十分に狙いを定めた効果的な政策によって、米国は世界のエネルギー業界で確固たる地位を確立することができるだろう。 by Addison Killean Stark2025.05.09
- この記事の3つのポイント
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- トランプ政権の関税政策は米国のクリーンエネルギー産業の成長を阻害している
- 米国は次世代エネルギー技術の製造とイノベーションの中心地になるべきだ
- 政府は戦略的に重要な産業を保護し高付加価値製品の製造に注力すべきだ
トランプ大統領と彼の指名を受けた閣僚たちは、「米国のエネルギー覇権」を確立する必要があると、繰り返し説いてきた。
しかし、ホワイトハウス(大統領府)による大統領令の乱発と強引な関税、そしてクリーン・エネルギー政策を撤廃するという断固たる方針は、業界を誤った方向に向かわせている。市場に混乱を引き起こし、経済を不安定化させることで、新興企業と旧来の大企業とどちらにとっても、投資、成長、競争が困難になっているのだ。
トランプ政権のいわゆる「相互」関税の大部分について、90日間発効が停止されている今こそ、再検討の絶好のチャンスだ。全面的で十把ひとからげな関税にただ回帰するのではなく、現政権はこの期間を利用して、貿易政策と焦点を絞った産業戦略の整合性をとるべきだ。この戦略の目標は、世界各国との競争を勝ち抜き、米国を次世代エネルギー・テクノロジー関連の製造業の中心地とすることである。
関税の制度設計を、米国の強みである研究開発、そしてエネルギー関連のイノベーション・ライフサイクルに対する近年の政府投資と緊密に結び付けることで、政権は時代に逆行した貿易方針を改め、経済成長と地政学的優位を実現する、先見性ある計画を打ち立てることができる。
米国は世界屈指のエネルギー資源に恵まれているという、大統領の指摘は正しい。この10年で、米国は石油の純輸入国から純輸出国へと成長し、石油と天然ガスの生産量で世界一の座に上り詰めた。こうした資源が、米国の製造業復興、そして堅固な国内産業基盤の再構築に不可欠であり、同時に対外的な戦略的優位をもたらすものであることに疑問の余地はない。
しかし、世界は徐々にだが確実に、数世紀続いた化石燃料の採掘と燃焼というモデルから移行しつつある。この変化は、当初は気候リスクに後押しされたものだったが、昨今ではますます経済的動機が推進するものになりつつある。米国が真のエネルギー覇権を達成するには、温室効果ガスを排出するエネルギー製品の単なる輸出国から進化し、洗練された高付加価値のエネルギー・テクノロジーの製造とイノベーションの世界的ハブになるほかに方法はない。
注目すべきは、米国がこれまでクリーン・テクノロジー部門に必要不可欠な初期構成要素、たとえば太陽光発電や電気自動車などの開発を牽引してきたことだ。しかし往々にして、イノベーションの恩恵――とりわけ製造業における雇用や輸出機会――を享受したのは外国、中でも中国だった。
中国は、トランプ大統領がもっとも高い関税を課し、90日間の発効停止の対象外とした国だ。そして、リチウムイオン電池、電気自動車、風力発電タービン、その他のクリーン・エネルギー転換 …
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