オープンAIが目指す「iPhoneの次」に期待すべきではない理由
私たちが待ち望んでいるのは、完璧に設計されたブラックボックスのAIデバイスではない。人々が共に発明し、観察し、学び、創造できるオープンなAIデバイスなのだ。AIオープンソース支持者が加わってメイカームーブメントの第2幕が始まろうとしている。 by Ayah Bdeir2025.06.25
- この記事の3つのポイント
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- オープンAIがアイオーを買収し世界最先端のテクノロジー開発を目指している
- メイカームーブメントがAIオープンソース支持者と共に第2幕を迎えつつある
- 筆者は閉鎖的なイノベーションに対しオープンな代替手段の構築を提案している
オープンAI(OpenAI)がアイオー(io)を買収し、「世界がこれまでに見たことのない最もクールなテクノロジー」を生み出そうとしたことは、「ハードウェアこそが人工知能(AI)の新たなフロンティア」という長年にわたる業界専門家たちの発言を裏付けるものであった。AIはもはや、遠く離れたクラウド上の抽象的な存在ではなくなりつつある。それは、私たちの家、部屋、ベッド、身体に迫ってきている。
しかし、これは憂慮すべきことだ。
またしても、テクノロジーの未来は、少数の人たちによって秘密裏に設計され、密閉されたシームレスで完璧なデバイスとして一般大衆に届けられようとしている。テクノロジーが秘密裏に設計され、ブラックボックスとして販売されるとき、私たちは単なる消費者へと成り下がる。私たちはアップデートを待つ。そして、機能に適応する。私たちがツールを形作るのではなく、ツールが私たちを形作る。
これは問題だ。そして、それは単に技術者やテクノロジストだけでなく、私たち全員にとっての問題である。
私たちは、無力化という危機のなかを生きている。子どもたちはかつてないほど不安を感じており、元米国公衆衛生局長官は孤独の蔓延を指摘し、人々はAIが教育を蝕むことをますます懸念するようになっている。私たちが使う美しいデバイスは、こうしたトレンドの多くと相関関係にある。そして今、おそらく現代で最も強力なテクノロジーであるAIは、画面から物理的な空間へと移行しつつある。
このタイミングは偶然ではない。ハードウェアはルネサンスを迎えている。あらゆる大手テック企業がAIの物理インターフェースに投資している。スタートアップ企業は、ロボット、メガネ、ウェアラブルデバイスを開発するための資金を調達しており、それらデバイスは私たちのあらゆる動きを追跡するようになる。AIのフォームファクターこそが、次の戦場なのだ。私たちは本当に、開くことのできないインターフェイス、見ることのできないコード、影響を与えることのできない意思決定を通じて、未来が完全に左右されることを望んでいるのだろうか?
いま、存在に関わる転換点、つまり物事を別の方法で進める機会が生まれている。なぜなら、シリコンバレーの自己中心主義から離れた場所で、静かで地に足のついた抵抗の感覚が再び活性化しているからだ。私はそれを「メイカーたちの逆襲」と呼んでいる。
2007年、アイフォーン(iPhone)の登場とともに、メイカームーブメントが芽生え始めた。このサブカルチャーは、ハッカースペースや図書館といった社会的な環境で、「メイキングを通して学ぶ」ことを提唱している。DIYやオープン・ハードウェアの支持者たちは、メイカーフェア(Maker Faires)という大規模なイベントに集まり、そこではあらゆる年齢層の人たちが、3Dプリンター、ロボット工学、エレクトロニ …
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