気候テック10:AIで安定供給、次世代風力タービンのエンビジョン
風力タービン・メーカーのエンビジョンは、複数の風力発電所を強調ネットワークとして扱い、AIで制御することで、電力の大規模な安定供給を実現。さらに、グリーン水素にも多額の投資をすることで、重工業分野における脱炭素化を支援している。 by Caiwei Chen2025.10.15
- この記事の3つのポイント
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- 中国風力大手エンビジョンがAI搭載タービンと統合産業パークで重工業脱炭素化に挑戦
- 風力発電の不安定性が産業利用の障壁となり電化困難分野の脱炭素化が課題
- 高額投資と地政学リスクが海外展開の障壁だが成功すれば脱炭素化の世界標準となる
風力エネルギーは現在、世界で最も安価で最大規模の再生可能エネルギー源の一つである。
中国の風力タービン・メーカーがこの分野を支配しており、エンビジョン・エナジーはトップ・サプライヤーの1社である。同社はタービンの製造を超えて、産業全体がクリーン・エネルギーでどのように稼働できるかを再考している。調査サービスのブルームバーグNEF(BloombergNEF)のデータによると、2024年にエンビジョンは世界第2位の風力タービン・メーカーだった。エンビジョンの「スマート」風力タービンは人工知能(AI)を使用して従来モデルより多くの電力を生成し、同社の産業パークは鉄鋼、化学、製造業などの重工業分野の脱炭素化を目指している。
起業家の張雷が中国・江陰市で創業したエンビジョンは、風力タービン・メーカーとして始まった。その後、使命を拡大し、発電、エネルギー貯蔵、燃料生産を結び付けて、クリーン・エネルギー転換のための「オペレーティング・システム」となった。
内モンゴルのオルドスにあるエンビジョンの主力プロジェクトは、石炭依存地域を産業脱炭素化のショーケースに変貌させた。この施設は電気自動車用電池を生産し、風力タービンを製造し、グリーン水素を生成している。すべてが完全に風力と太陽エネルギーで稼働している。
風力発電は常に信頼性に苦しんできた。風のパターンの季節的・時間的変動により、風力タービンだけで電力を大規模に安定供給することは困難なのだ。エンビジョンのスマート・タービン技術は、風力発電所を孤立した機械ではなく、協調ネットワークとして扱うことで、これらの変動を緩和する。各タービンは風の状況をリアルタイムで分析し、性能を調整し、他のタービンと同期してより多くのエネルギーを捕捉する。初期結果は、このシステムが従来のタービンと比較して約15%発電量を増加させられることを示している。
同社はまた、より少ない材料で典型的な3枚羽根タービンと同じ量の電力を生成することが期待できる、2枚羽根タービンの設計もテストして …
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