KADOKAWA Technology Review
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14億人をデジタル化、
インド版マイナンバーの父の
終わりなき野望
Andrea D'Aquino
倫理/政策 Insider Online限定
The man who made India digital isn’t done yet

14億人をデジタル化、
インド版マイナンバーの父の
終わりなき野望

世界最大のデジタル身分証システム「アーダール(Aadhaar)」を構築し、14億人のインド国民をデジタル化した男、ナンダン・ニレカニ。70歳になった今も、電力網の刷新、グローバルな金融基盤「フィンターネット」の構築に挑む。 by Edd Gent2026.01.16

この記事の3つのポイント
  1. ニレカニが30年前から構築したデジタル公共インフラがインドの14億人の日常を変革している
  2. 従来の官僚制度や金融排除をテクノロジーで解決する必要性から生体認証システムが誕生した
  3. プライバシー懸念や技術的欠陥が残るものの、グローバル展開を目指している
summarized by Claude 3

ナンダン・ニレカニは、インドを未来へと突き進めようとする試みをやめられないでいる。彼は約30年前、世界最大のデジタル身元認証システムである「アーダール(Aadhaar)」から始まる、技術による国家機能強化の実験を立ち上げ、今もなお指揮を執っている。Aadhaarはヒンディー語で「基盤」を意味し、その基盤の上に、ニレカニと彼の協力者たちは、社会全体のためのデジタル・インフラともいえる、無料で相互運用可能なオンライン・ツール群を構築していった。それらは政府サービス、デジタル決済、銀行、信用、医療をカバーし、インドの10分の1の規模しかない裕福な国々でさえ驚くような利便性とアクセス性を実現している。インドでは、これらのシステムを総称して「デジタル公共インフラ(Digital Public Infrastructure、DPI)」と呼んでいる。

70歳になったニレカニは、すでに引退していてもおかしくない年齢だ。しかし、彼にはまだいくつかの構想がある。インドの電力網は老朽化しており、頻繁に障害が発生する。ニレカニは、これを安定化させるために、デジタル通信の層を追加したいと考えている。また、DPIの金融機能を世界各地に広げ、彼が「フィンターネット(finternet)」と呼ぶ、商取引のためのグローバルなデジタル基盤を築くという構想もある。

「クレイジーに聞こえるかもしれません」とニレカニは言う。「でも、どれも大きな構想であり、今後5年以内に確実で実質的な成果をもたらすと信じています」。公的活動の最後の一手として、世界をアーダール化してみるのはどうだろうか。

インドのデジタル基盤

いまや、最寄りの銀行から何時間も離れたインドの村に住む農民でも、地元の店にある指紋スキャナーに親指を押し当てるだけで、福祉給付金を受け取ったり、送金したりできる。運転免許証、出生証明書、学歴証明などのデジタル認証済みコピーには、スマートフォン上のデジタルウォレットを通じてアクセスし、共有することが可能だ。

現金の利用がますます減少している大都市では(紙幣を崩すだけでも一苦労だ)、大通りの小売店でテレビを買うときも、道端の屋台でココナッツを買うときも、モバイル決済が当たり前になっている。手数料はかからず、どの決済アプリや銀行口座からでも、他のどこにでも送金できる。国内の公立・私立病院という入り組んだパッチワークも、すべての医療記録をデジタル化し、全国規模のプラットフォームにアップロードし始めている。オープン・ネットワーク・フォー・デジタル・コマース(Open Network for Digital Commerce、ONDC)では、消費者は好みのアプリでオンライン・ショッピングの検索ができ、その検索結果には他のプラットフォーム上の販売者も表示される。この仕組みは、小規模な販売業者や消費者を、アマゾンや国内大手のフリップカート(Flipkart)といったオンライン・ショッピング大手の閉じられたエコシステムから解放することを目的としている。

これらすべてのツールの中心にあるのが、アーダールである。このシステムは、すべてのインド国民に12桁の番号を割り当て、それを指紋スキャンまたはSMSコードと組み合わせることで、政府サービス、SIMカード、基本的な銀行口座、デジタル署名サービス、社会福祉給付金へのアクセスを可能にしている。インド政府によれば、2009年の導入以来、アーダールは効率性の向上、腐敗官僚の回避、その他の不正防止によって3兆4800億ルピー(392億ドル)を節約したという。このシステムは物議を醸しており、完璧とは言えない。14億人が登録されたデータベースには、本質的にセキュリティやプライバシーの懸念が伴う。それでも、世界最多の人口を抱える国において、日常生活で人々が直面するお役所的な手続きの多くが、いまやクラウド上で処理されている。

ニレカニは、これらの革新の多くを背後で支え、公務員、テクノロジー企業、ボランティアの軍団を率いた。そして今、彼はそれが日々実際に機能している様子を目にしている。「自分がやってきたことは抽象的な理論ではなく、現実の人々のための本物の取り組みなのだと、改めて実感できます」。

本人も認めているように、ニレカニはキャリアの終盤に差し掛かっている。しかし、まだ終わりではない。現在は、発電・送電・配電を担う企業が保有する断片的なデータを統合する政府主導のイニシアチブ「インド・エナジー・スタック(India Energy Stack:IES)」のチーフメンターを務めている。インドの電力網は不安定で地域差も大きいが、ニレカニはアーダールのようなアプローチがその改善に役立つと期待している。IESは、発電所や蓄電施設だけでなく、屋上設置型のソーラーパネルや電気自動車に至るまで、それぞれに固有のデジタルIDを付与することを目指している。これらに関連するすべてのデータ(機器の仕様、エネルギー格付けの認証、使用情報)は、共通の機械可読フォーマットで、同じオープン・プロトコルを通じて共有される。

理想的には、これにより電力網運用者はエネルギーの需給状況 …

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