「若返る」提供肝臓、機械灌流が生物学的年齢を逆戻りさせる
提供された肝臓は、移植までの間に機械灌流を受けると、氷上で保存された肝臓に比べて生物学的年齢がおよそ30%低いことが新たな研究で示された。米研究チームが老化時計を用いて103個の肝臓から採取した208検体を分析した結果だ。だが、この「若返り」がレシピエントの体内でどのような意味を持つのかは、まだ分かっていない。 by Jessica Hamzelou2026.09.15
- この記事の3つのポイント
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- 機械灌流を受けた提供肝臓はエピジェネティクス指標で生物学的に約30%若返ることが判明した
- 灌流により炎症抑制や細胞内オートファジー経路が活性化され、分子レベルの修復メカニズムが示唆される
- 高齢・高リスクドナー臓器への適用拡大や低コスト薬剤代替の開発が今後の重要な研究課題となる
臓器がドナーの体から摘出された瞬間、時間との闘いが始まる。外科医は通常、臓器に保存液を流し込み、袋に入れて氷上で保存する。しかし、そこでも臓器はすぐに劣化し始める。移植チームには、臓器をレシピエントの体内に収めるまで数時間しかない。
別の選択肢もある。近年、特に状態があまり良くない提供臓器に対して普及しつつある方法だ。一部の病院では、臓器を装置につなぎ、栄養分を含む液体を循環させながら老廃物を除去する。通常は6〜12時間ほど行なわれる。いわば、臓器を再び体内に戻したような状態にするのだ。
この方法なら、医師は臓器の状態を評価できる。また、最近の研究では、こうした灌流装置に接続しておくことで、移植後の臓器の状態が良くなる可能性が示されている。そして今回、科学者たちは、灌流を受けた臓器が少なくとも分子レベルでは若返るように見えることを発見した。
MITテクノロジーレビューに共有された新研究は、若いドナーから提供された臓器の移植成功率が高いことで知られている理由について、分子レベルの手がかりを示している。また、灌流を受けた臓器がレシピエントに移植された後、機能不全を起こしにくい理由の解明にも役立つ可能性がある。
この研究に携わった研究者たちは、提供臓器の健康状態を調べる新たな方法を見つけ、さらには、本来なら廃棄される可能性のある臓器を修復するための新たな手段を開発したいと考えている。「現在のシステムで可能な範囲を超えて臓器を有効活用できるようになれば、それは大きな成果です」。ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院で老化を研究する研究者で、この研究の共著者でもあるジェシー・ポガニク博士はこう語る。
臓器の時計を読む
ポガニク博士は、マス・ジェネラル・ブリガム(Mass General Brigham、米国最大規模の病院系研究機関)の移植外科医であるハイディ・イェー医師やアルバン・ロンシャン医師らとともに、提供された肝臓の評価に「老化時計」を用いた。老化時計とは生物学的年齢を測定するための科学的な手法で、その結果は、暦年齢よりも臓器や人の健康状態を的確に示すとされる。
最初の実験では、チームは老化時計を使い、19個の提供肝臓から採取した37検体について、DNA上の化学的修飾のパターンを調べた。このようなエピジェネティックなパターンは、加齢とともに変化することが知られている …
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