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若い心臓は体に合わせて老いる——プーチンには残念な研究結果
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Adobe Stock
Young organs may not be a fountain of youth for recipients

若い心臓は体に合わせて老いる——プーチンには残念な研究結果

年老いた体に若い臓器を移植すれば若返れると考えている人たちには、残念な研究結果が発表された。マウスに心臓を移植する実験で、若い心臓は年をとり、年老いた心臓は若返って、いずれも移植先の体の生物学的年齢を獲得することが示された。研究は査読前の段階だが、ヒトの心臓生検でも同じパターンが見られた。 by Jessica Hamzelou2026.09.29

この記事の3つのポイント
  1. マウス・ヒトの心臓移植研究で、移植臓器はレシピエントの生物学的年齢に適応することが判明
  2. 免疫系の関与が示唆される一方、単一臓器の若返り効果は全身の老化で希釈される可能性
  3. 高齢ドナー心臓の活用促進が期待されるが、老化の完全逆転は困難との課題も浮上
summarized by Claude 3

2025年の今頃、私はマンチェスターで開催された老化に関する会議に参加し、ハエの老化についての講演を聞いていた。そのとき、携帯電話が鳴り始めた。ロシアと中国の首脳が不老不死の可能性について話し合っているところをマイクが拾ったと、複数の報道機関が伝えていたのだ。

「バイオテクノロジーの発展により、臓器は継続的に移植できるようになり、人々はどんどん若返り、ついには不老不死を実現できるでしょう」と、ロシアのプーチン大統領は中国の習近平国家主席に語ったと報じられている。

同大統領は、若いマウスと年老いたマウスを物理的に縫合する実験によって裏付けられてきた、長寿の「置換」理論について言及しているのだろう。若い血液の何かが、年老いたマウスを若返らせたのだ。もしかすると、若い臓器によって、70代の世界の指導者たちも若返ることができるかもしれない。

プーチン大統領にとって残念なことに、新たな研究はこの考えに多少の冷や水を浴びせる結果となった。マウスとヒト双方における心臓移植の研究から、新しい心臓は当初どれほど若くても、やがてレシピエント(移植を受けた人)の生物学的年齢に適応することが示唆されたのだ。この発見は移植医療にとって重要な意味を持つ可能性がある一方で、老化、そして若返りがいかに複雑であるかも浮き彫りにしている。

ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)のジェシー・ポガニク博士は、若いマウスの体内の何が年老いたマウスを若返らせるのかを正確に解明しようとしている、数多くの科学者の1人だ。若さの秘密を若い血液に求める研究は数多くなされてきた。しかし、それが実は若い臓器に関係しているとしたらどうだろうか。

これを明らかにするため、ポガニク博士の研究チームはマウスを用いた一連の心臓移植実験を実施した。人間の場合、心臓移植では通常、損傷した心臓を摘出し、レシピエントよりも大幅に若いドナーの心臓と交換する。(ポガニク博士が病院の記録を調べたところ、レシピエントの多くはドナーよりも約20歳年上であることが分かった。)

だが、マウスでの移植は事情が異なる。マウスには首に2つ目の心臓を移植した。この処置は比較的簡単で、新しい心臓を既存の心臓と比較することを可能にする。ある場合には若い成体マウスに中年のドナーの心臓が、また別の場合には中年のマウスに若い心臓が移植された。

研究チームは、組織や生物全体の生物学的年齢を推定するための分子ツールである、3種類の「老化時計」を用いて、追加された心臓がマウスに何らかの影響を及ぼすかどうかを評価した。これらの老化時計は、新しい心臓を移植されていないマウスの暦年齢を予測するのに優れていた。

ポガニク博士は、相互的な効果、例えば若い心臓が年老いた動物に恩恵をもたらすといった結果を予想していたという。彼のチームの他のメンバーによる以前の研究では、老いた心臓を移植された若いマウスは、他の臓器に老化細胞が蓄積することが分かっていた。これらの細胞は老化過程に寄与すると考えられており、老いた臓器を受け取ることで動物が早期に老化する可能性を示唆している。

しかし、実際に見つかった結果はそれとは違った。研究チームが手術から4〜6カ月後に移植された心臓を分析したところ、心臓はレシピエントの生物学的年齢を獲得しているように見えることが分かった。移植された若い心臓は年をとり、年老いた心臓は若返っていたのだ。「移植された臓器を取り巻く環境こそが、その臓器が生物学的にどう振る舞うかを決定づけているようです」とポガニク博士は語る。この研究成果は先日、バイオアーカイブ(bioRxiv)にオンラインで発表された。

研究チームはまた、各マウスの血液や、元の心臓を含むその他の臓器についても調べた。そして、ドナーの年齢にかかわらず、新しい心臓の存在による影響を受けていないように見えることに驚いた。

この発見は、ヒトの心臓移植に関するデータによっても裏付けられた。ドナーの心臓を受け取った人は通常、手術後に一連の心臓生検を受けなければならない。ブリガム・アンド・ウィメンズ病院で心臓移植を受けた人々から採取された微小な心臓組織片は、数十年にわたって保存されてきた。ポガニク博士の研究チームが老化時計を用いてこれらの組織の生物学的年齢を調べたところ、同様のパターンが見られた。すなわち、ドナーの年齢にかかわらず、新しい心臓は移植を受けた人の生物学的年齢を急速に獲得するのだ。

この理由は明らかではない。だが、この研究には関与していない、英国バーミンガム大学で老化を研究するジョアン・ペドロ・デ・マガリャンイス博士は、レシピエントの免疫系が関係している可能性があると考えている。血液中を循環する免疫細胞が、新しい臓器の老化マーカーに影響を与えているのかもしれないと言う。

もしかすると、若い心臓が持つ潜在的な若返り効果は、老いた体の他のあらゆる老化した構成要素によって希釈されてしまうのかもしれない、とポガニク博士は示唆する。あるいは、単一の臓器だけでは効果を示すのに十分ではないのかもしれない。

ポガニク博士は、この発見によって、外科医たちが年齢の高いドナーの心臓の使用を検討するようになることを期待している。そうした心臓の多くは、機能が劣るだろうという想定のもとに廃棄されているからだ。(移植前に臓器を保存するために使われる機器は、すでにこの状況を変えつつある。ポガニク博士はまた、こうした機器がドナーの肝臓をある程度若返らせるように見えることを示す別の研究にも取り組んでいる。)

だが、今回の研究はまた、老化がいかに複雑であるかを浮き彫りにしてもいる。ある指標では臓器が老化しているように見えても、別の指標ではそうでないとしたら、臓器や人の生物学的年齢の全体像をどうやって把握すればよいのだろうか。

この複雑さゆえに、科学者が老化を完全に逆転させる真の方法を発見する可能性は低いと、ポガニク博士は言う。「それは、老化のあらゆる側面を過去に巻き戻さなければならないということを意味します」。DNAの損傷や構造的な損傷、そして老化に伴うその他あらゆる劣化を、私たちの様々な細胞や組織すべてにわたって逆転させることは、途方もない課題である。

「生物学的年齢には、おそらく可逆的な側面もあれば、おそらく不可逆的な側面もあります」とポガニク博士は語る。プーチン大統領には申し訳ないことだ。

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ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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