電動自転車からコンロまで、小型バッテリーは都市の送電網を支えるか
ニューヨーク市では規制の壁に阻まれ、大型バッテリーを送電網に組み込むのが難しい。そこで一部のスタートアップは、配達用電動自転車の交換式バッテリーやバッテリー内蔵のIHコンロなど、意外な場所で小型バッテリーを活用し始めている。 by Casey Crownhart2026.10.06
- この記事の3つのポイント
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- ニューヨーク市の規制障壁を背景に、電動自転車や調理器に小型バッテリーを活用する動きが拡大
- 大型蓄電施設は火災懸念で反発を招く一方、小型分散型は許認可不要で導入しやすい
- 分散型バッテリーの集積が送電網を支える可能性があるが、大規模貯蔵の重要性も残る
ニューヨーク市に大型バッテリーを設置しようとすると、悪名高いほど複雑に絡み合った規制の壁に突き当たる。そのため、大規模なエネルギー貯蔵プロジェクトを送電網に組み込むのが難しくなっている。
こうした障壁に直面し、一部のスタートアップは創意工夫を凝らし、IHコンロ(電磁誘導加熱式コンロ)からフードカートまで、意外な場所で比較的小型のバッテリーを活用する方法を見つけつつある。こうした消費者寄りのバッテリーを展開することで、各社は汚染や電気代の削減を通じて人々を直接支援している。そしてこれらのユニットは単体では小さくても、積み重なれば相当な容量になり得る。
送電網向けの大規模な蓄電システムは、世界各地で急速に稼働を始めている。しかし、特にニューヨーク市のような人口密度の高い地域のコミュニティからは、比較的まれではあるが世間の注目を集めるバッテリー火災への懸念から、反発の声も上がっている。
「大規模な集中型エネルギー貯蔵事業者が直面する最大の課題は、そのメリットが抽象的である一方、コストは具体的であるという点です」と、ポップウィールズ(PopWheels)の共同創業者兼社長のデービッド・ハマーは、9月24日に開催されたニューヨーク気候週間(Climate Week NYC)のイベントで語った。
ポップウィールズは、市内を電動自転車で駆け回る配達ドライバー向けに、バッテリー交換システムを構築した。ドライバーは専用キャビネットで使い果たしたバッテリーを充電済みのものと交換すれば、止まって充電する必要がない。ニューヨーク市内には約50カ所のキャビネットがあり、約2500個のバッテリーが流通しているとハマー社長は言う。
同社は最近、フードカート運営者にもバッテリーの提供を開始し、現在頼っているガス発電機の代替を可能にした。同社のバッテリー4個でおよそ5キロワット時の電力を供給でき、多くのカートにとって1日の営業をほぼカバーできる量だという。
一方、家庭の中に目を向ける企業もある。例えばカッパー(Copper)は、バッテリーを内蔵したIHコンロを開発している企業だ。この家電製品があれば停電時でも調理できるほか、コンロ使用時にはバッテリーが一部の電力を供給するため、住宅所有者が高額な電気設備の改修を避ける助けにもなり得る。「私たちは単に防災用のバッテリーを売っているのではなく、コスト削減のために売っているのです」と、カッパーの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のサム・カリッシュは、ニューヨーク気候週間のイベントで語った。

エブリーエレクトリック(Every Electric)やデービッドエナジー(David Energy)といった他の企業は、家庭や事業所向けにプラグイン式のバッテリーを販売している。エブリーエレクトリックのバッテリーはエアコンユニットに接続して使う設計になっている。同社はバッテリーを提供し、送電網の負荷の高い時間帯に電力の使用量を減らした顧客に対価を支払う。デービッドエナジーも同様のビジネスモデルを採っているが、コインランドリーや駐車場、ジムといった事業者を対象としている。
これらの企業のバッテリーはいずれも小型であるか、あるいは他の機器に内蔵されているため、一般的には送電網の改修や煩雑な許認可手続きを必要としない。プラグを差し込むだけでそのメリットを享受できる点は、家庭や事業所の電力需要を相殺する小型モジュールをプラグインして使う、普及が進むベランダ太陽光発電と似ている。
より分散化したバッテリーへのこうした流れは、送電網にとって大きな変化となり得る。「これは過去20年間で電力網セクターに起きた最大の出来事です」と、デービッドエナジーの共同創業者兼CEOのジェームズ・マッギニスは言う。
米国のすべてのコンロにバッテリーが搭載されて出荷されれば、合計で数十ギガワットの電力規模に達するだろう、とカリッシュCEOは述べた。これは送電網に負荷がかかった際に集約して活用できる容量である。
バッテリーが今後さらに安価になるにつれ、私たちの生活のより多くの場面に入り込み、多くの恩恵をもたらす可能性が高い。きれいな空気、安い電気代など魅力は多い。とはいえ、大規模なエネルギー貯蔵の必要性がなくなるわけではない。より大規模な設備は、風力や太陽光といった間欠性の再生可能エネルギーを支え、急速に拡大する電力需要のより多くをまかなえるようにするという重要な役割を担うだろう。
しかし私としては、コンロや電動自転車、窓用エアコンといった機器を束ねた群れが、送電網をどこまで支えられるようになるのか興味を持っている。送電網はますます逼迫しており、特にニューヨークのような人口密集都市ではその傾向が顕著だ。夏場の停電を防ぐ助けになるものであれば、何であれ歓迎すべきだろう。
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- ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
- MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。