KADOKAWA Technology Review
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Seven over 70

70歳以上のイノベーター7人

イノベーションは若者だけのものではないことの証拠。 by Jason Pontin2016.08.24

私たちが毎年発行している35歳未満の35名のイノベーターリストは、次の反論を避けることができない。「本当に老人は革新性がないのか?」もちろん老人もイノベーティブである。私たちが若者のリストを作るのは、将来有望な研究者や起業家を紹介したいからだ。しかし、年配の人も若者と同じく新しいことを考えられる。次の70歳を超える7人のイノベーターは今も現役だ。

1.シャーリー・アン・ジャクソン(70歳、レンセラー工科大学18代学長) 理論物理学者であるシャーリー学長は、アフリカ系アメリカ人女性で初めてマサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得した。レンセラーを主要な研究の中心地にしたことで広く称賛されている。オバマ大統領の情報活動諮問会議の共同議長や、原子力規制委員会委員長(1995~1999年)など、膨大な数の委員も務めてきた。

2.マイケル・ストーンブレーカー71歳) 計算機科学者として研究し、スタートアップ企業を設立したストーンブレーカーは、現在あらゆる場所で使われている関係データベースに直接影響を与えた。カリフォルニア大学バークレー校とシリコンバレーに長年働き、MITの非常勤教授、起業家として、2~3年ごとに新しい会社を共同設立、ストーンブレーカーのデータベース管理における画期的技術を商業化し続けている。2014年に、チューリング賞を受賞した

3.デレク・パーフィット(1942年生まれ、哲学者) 1984年に『理由と人格―非人格性の倫理へ』を出版し大きな称賛を受けた。テレポーテーションについての考察等、SFを取り入れた思考実験により、人格の同一性や将来の世代に対する人間の義務についての思索を探求した。37年ほぼ無言だったが、記念碑的未完の作品は、哲学者や読書グループの間で原稿の形で広まっていた。2011年、ようやくパーフィットはOn What Mattersを出版した。この本は、道徳の規則主義帰結主義そして契約主義の概念を、パーフィットが「異なる斜面から同じ山を登ること」として調和させた。

4.マシュー・カーター(78歳、歴史上最も作品を作った書体デザイナーの1人) カーターは、他の誰よりも活版用活字からデジタル書体への変換に関わっている。中でもGeorgiaは、非常に小さい画面や、解像度の低い画面でも読みやすいようにデザインされ、「ウェブのコアフォント」の1つとしてInternet Explorer 4.0にバンドルされた。カーターの美しい書体には、Miller、VerdanaやWalkerがあり、ニューヨーク近代美術館で常設展示されている。

5.ドナルド・クヌース(78歳、スタンフォード大学名誉教授) 続刊中の『The Art of Computer Programming』の著者この本は当初、1962年に12章からなる1冊の本として着想を得たが、シリーズを完成させるため、クヌースは1990年に教授を退職した。この第4巻分冊6(「Satisfiability」)は、昨年12月に刊行された。

6.リタ・コルウェル(1934年生まれ、環境微生物学者) 1998年から2004年まで全米科学財団理事長を務め、現在はメリーランド大学とジョンズ・ホプキンス大学の教授、キヤノンU.S.ライフ・サイエンシズ名誉会長、診断学・公衆衛生と創薬のために微生物の特定のためにデータを分析する企業コスモスIDのCEO。2006年、コルウェルは米国国家科学賞を受賞した。

7.ルゼナ・バイチ(83歳、ロボット研究者) 今でも精力的に論文を発表している。チェコスロバキアで生まれ教育を受け(ナチスに身内のほとんどを殺され、11歳の時は孤児だった)、ペンシルベニア大学の電気工学教授になり、米国国立科学財団のコンピューターおよび情報科学・情報工学で5億ドルの予算がついた研究をした。現在はカリフォルニア大学バークレー校の教授で、公益情報技術研究センターの名誉所長でもある。現在の主な研究はAI、計算生物学と生物系。昨年、マイクロソフトのキネクトを用い高齢者や筋ジストロフィー患者の生活を向上する3本の研究論文を共同執筆した。

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クレジット Photograph by Drew Angerer | Getty; image courtesy of David Monniaux | Wikimedia Commons; image courtesy of Maynard Clark | Wikipedia; image courtesy of John D. and Catherine T. MacArthur Foundation | Wikimedia Commons; image courtesy of world water week | Flickr; image courtesy of vonguard | Wikimedia Commons; image courtesy of University of Pennsylvania;
ジェイソン ポンティン [Jason Pontin]米国版 編集長兼発行人
MIT Technology Reviewの編集長兼発行人です。編集部門だけではなく、プラットフォームの開発、紙とデジタルの会社の全般的な事業戦略、イベントまで担当しています。2004年にMIT Technology Reviewに参画する以前は、休刊してしまったバイオテクノロジー誌の創刊編集長でした。1996年から2002年までは、レッド・ヘリング誌(ウォールストリートジャーナルには「ドットコムブームの聖典」と呼ばれました)の編集者でした。育ったのは北カリフォルニアで、母はサンフランシスコのレストラン向けに狩猟鳥を育てていました。ただし、教育を受けたのはイギリスで、ハロウスクールとオックスフォード大学で学びました。その結果、私の英語のアクセントはあり得ないくらいに変わってしまいます。
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MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

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