日本の農家の働き手不足が深刻化している。農林水産省の2021年の調査によると、農家の平均年齢は67.9歳まで上昇しており、65歳以上が6割を占める。一方の新規就農者は過去10年間ほぼ横ばいが続いており、農業就業人口はこの10年でおよそ4割も減少した。
ブルーム・タミル(Tamir Blum)が開発したのは、農家の人手不足を補う農作物運搬ロボットだ。りんごやなしなどの農産物を最大150キログラム載せ、収穫場と仕分け場までの間を最長8時間、自動走行で運ぶ。このロボットの最大の特徴は、コンピュータービジョンと人工知能(AI)技術の1つである深層強化学習を利用し、GPSの信号が届きにくい高地や、未舗装で傾斜のきつい不整地でも自動走行できることだ。タミルは、厳しい月面環境で走行する月面探査機に着想を得て、ロボットが最適なルートを自ら判断し、凹凸や障害物のある環境でも自動走行できるAIアルゴリズムを開発した。
これには、タミルのユニークな経歴が関係している。イスラエル系米国人であるタミルは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で航空宇宙工学を専攻し、スペースXやエアロヴァイロンメント(AeroVironment)でのエンジニア経験を経て、日本の東北大学で博士号を取得した。宇宙ロボットの研究を専門としてきたタミルが地上へと転じたきっかけは、旅行先の東北地方で日本の農家の高齢化を目の当たりにしたことだったという。2年前、タミルは「農家が農場を拡大できるような将来を作る」という目標を掲げ、スタートアップ企業を創業した。
現在、タミルは数十軒の農家の協力を得てロボットの実証実験を実施し、来春の製品化を目指している。さらに、画像認識による樹木の病気の判定、農薬の散布や草刈りなども新たなロボットで実現したい考えだ。人手不足という喫緊の課題解決だけでなく、農業をさらに魅力的な産業にするため、タミルの挑戦は続く。
(元田光一)
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