フラッシュ2022年5月13日
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しつこい「かゆみ」の悪循環の仕組みを解明=九大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]九州大学、岡山大学、ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、慢性的なしつこいかゆみを発生させる仕組みを解明した。アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などに伴う慢性的な強いかゆみを感じると、何回も繰り返して引っ掻いてしまう。その結果皮膚の炎症が悪化して、かゆみがさらに増すという悪循環に陥る。こうした「かゆみと掻破(そうは)の悪循環」のメカニズムは従来、解明されていなかった。
研究グループは、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎のモデルマウスを作製し、神経の活動を調べたところ、皮膚からのかゆみ信号を脳へ送る脊髄神経(かゆみ伝達神経)の活動が高まっていること、マウスの爪を切り揃えて皮膚への引っ掻き刺激を抑えるとかゆみ伝達神経の活動が治まることを発見した。
さらに、かゆみ伝達神経の活動の高まりには、皮膚を繰り返し引っ掻くことによって、皮膚と脊髄をつなぐ感覚神経で増える「NPTX2(neuronal pentraxin 2)」というタンパク質が関係していることも分かった。かゆい皮膚を何回も引っ掻くことにより、感覚神経でNPTX2が増え、それが神経の中を通って脊髄へ運ばれ、かゆみ伝達神経に作用してその神経活動が高まり、さらにかゆみを生むという仕組みだ。NPTX2を除去したマウスでは、脊髄のかゆみ信号伝達神経の活動の高まりとかゆみを抑制できたという。
研究成果は5月2日、「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」誌にオンライン掲載された。今後、NPTX2の増殖を抑える化合物や、NPTX2の作用を阻害する化合物が見つかれば、慢性的なかゆみに有効な治療薬につながる可能性がある。
(笹田)
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