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税額控除終了後も売れ行き好調、米国ヒートポンプ市場の底堅さ
duallogic/Envato
Why heat pumps are still so hot in the US

税額控除終了後も売れ行き好調、米国ヒートポンプ市場の底堅さ

真夏に暖房の話は気が引けるが、ヒートポンプの数字が面白いことになっている。米国では2025年末に最大2000ドルの税額控除が終了したのに、2026年に入っても販売は落ちていない。控除が終わって販売が急落したEVとは対照的だ。 by Casey Crownhart2026.07.21

この記事の3つのポイント
  1. 米国でヒートポンプ販売が税額控除廃止後も増加し、ガスストーブを32%上回るペースで普及している
  2. 高効率・低運転コスト・脱炭素効果が補助金なしでも選ばれる理由であり、市場の自律的成熟を示している
  3. EVと異なり補助金依存度が低いことは、ヒートポンプが真の普及段階に入った証左として注目される
summarized by Claude 3

真夏に暖房器具のことを考えるだけでも罪悪感を覚えそうだ。ニューヨークの熱波は本当に過酷だった。だが、ヒートポンプについて話す必要がある(日本版注:ヒートポンプは日本のエアコンと同原理の暖冷房装置。北米ではガス暖房が主流で、その代替として普及が進んでいる)。

ヒートポンプは電力を使用する暖房であり、驚くほど効率が高く、普及が進んでいる。(多くのヒートポンプは逆運転で建物の冷房にも使えることは付記しておく価値がある)。米国では、新たなレポートによると、ヒートポンプの販売台数は過去15年間で2倍に増加した。また、化石燃料との暖房競争でも優勢で、2026年第1四半期には天然ガスのストーブを32%上回るペースで普及している。

これらの統計は、現時点において特に注目に値する。ヒートポンプに対する重要な税額控除が2025年末をもって終了したばかりだからだ。しかし、データを見る限りその影響は見当たらない。なぜヒートポンプはいまだに熱い注目を集めているのか。

簡単におさらいしておくと、ヒートポンプは本質的に、電力を使って熱をある場所から別の場所へ移動させる装置だ。冷媒が装置内のループを循環し、膨張と圧縮を繰り返しながら、サイクルの各段階で熱を吸収・放出する(熱力学についてより詳しく知りたい方には、2023年に筆者が執筆した解説記事が今でも参考になるだろう)。

その結果、ヒートポンプは驚くほど効率的な機器となっている。購入・設置費用を支払えば、ガスや石油を使うストーブ、あるいは他の電気暖房システムと比べて、一般的に運転コストが大幅に安くなる。また、より効率的で化石燃料を燃焼させないため、建物の脱炭素化に大きく貢献できる。

ヒートポンプの普及における主な障壁の一つは、機器のコストだ。ガスストーブと比べて購入・設置費用が高くなる傾向がある。そのため、多くの政府が普及を促進するためのインセンティブを提供している。米国では、2023年から2025年の間にヒートポンプを設置した人は、最大2000ドルの税額控除を受けられた。

しかし2025年にトランプ政権は、この税額控除を2022年のインフレ抑制法(IRA)に盛り込まれていた多くのインセンティブとともに廃止した。2026年1月1日以降、ヒートポンプへの財政的支援はなくなった。

この展開には既視感がある。そして結末は好ましくなかった。新型EV(電気自動車)に対する最大7500ドルの税額控除は2025年9月30日に終了した。その期限直前の四半期には、インセンティブを活用しようとする人々が殺到し、販売台数が急増した。その後、販売台数は急落した。現在は正常化しつつあるが、税額控除の終了が大きな影響を与えたことは明らかだ。

しかし、ヒートポンプはまったく異なる展開を見せている。エネルギー経済学者でカリフォルニア大学バークレー校のルーカス・デービス教授が新たな分析で指摘しているように、2026年の最初の数カ月間、ヒートポンプの販売台数は実際に増加している。

米国市場の約90%を代表する業界団体、空調・暖房・冷凍協会(Air Conditioning, Heating, and Refrigeration Institute)のデータによると、ヒートポンプの出荷台数は2025年12月から2026年1月にかけて横ばいで推移し、その後は緩やかな上昇傾向にある。冬から春にかけてのこの増加は例年見られる季節的なトレンドに沿ったものであり、2026年はむしろやや力強い伸びを示している。

このデータは、税額控除の廃止が需要を損なっているときに見られるはずのものとは異なる。デービス教授が投稿の中で述べているように、この控除は実際にはヒートポンプの設置を人々に促す効果をほとんど持っていなかったようだ。少なくとも、追加のインセンティブがなくてもヒートポンプを選ぶ理由は十分にあったということだろう。

「米国のヒートポンプ市場は、税額控除に依存しなくても十分に成立するほど強固であるようです」とデービス教授は記している。

2024年、MITテクノロジーレビューはヒートポンプを年次ブレークスルー技術リストに掲載し、「ヒートポンプの時代に突入した」と当時筆者は記した

ヒートポンプの販売台数はここ数年で増減を繰り返してきたが、その時代は依然として力強く続いている。米国では過去4年間、ヒートポンプはガスストーブの販売台数を上回っている。これは米国だけの話ではない。中国やドイツを含む各国でも、近年ヒートポンプへの移行が顕著に進んでいる。

新技術の普及に一直線な道はほとんどない。多くの個々の家庭が大きな変化を迫られるものであればなおさらだ。しかし、障壁が生じても主要な脱炭素化ツールが力強く普及し続けていることは、心強い兆候である。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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