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光に賭けたサイクオンタム、
100万量子ビット達成へ
「大胆な約束」は果たせるか
Winni Wintermeyer
コンピューティング Insider Online限定
PsiQuantum has a plan to make a massive quantum computer out of light

光に賭けたサイクオンタム、
100万量子ビット達成へ
「大胆な約束」は果たせるか

2016年に著名な研究者らが立ち上げたサイクオンタムは、光子を利用することで、どこよりも早く実用的な量子コンピューターを作ることを目指している。だが、取り組みの詳細は明らかにしておらず、2027年末までに試験施設を「稼働可能」な状態にするとしているが、実用上の影響力を持つかどうかは未知数だ。 by James O'Donnell2026.07.21

この記事の3つのポイント
  1. サイクオンタムは光子を量子ビットに用いる独自方式で、2027年のハードウェア稼働を目標に10億ドルを調達し施設建設を進めている
  2. 既存半導体サプライチェーンを活用しつつチタン酸バリウムを自社製造するなど、スケーラブルな量子コンピューター実現に向けた工学的基盤を構築中だ
  3. DARPAの評価プログラム第3段階に進出するなど期待は高まる一方、外部検証が困難で約束した性能を実証できるかは2027年以降まで不透明なままだ
summarized by Claude 3

世界を変える可能性があるこの機械は、データセンターとアイスクリーム工場を融合させたような部屋に設置される。部屋の中には、高さ180センチほどのステンレス製のキャビネットが約100台置かれ、それぞれが、絶対零度よりも数度だけ高い温度に維持された液体ヘリウムの供給装置に接続される。それらのキャビネットの内部には何百個ものチップが収められ、その上を何千もの光の粒子が、迷路のように複雑に接続された光スイッチやビームスプリッターの中を飛び交う。そのそれぞれの光子を、すべて把握する必要がある。光子が最終的に行き着く場所を正確に測定することで、現在のコンピューターでは解決に数100万年かかるかもしれない問題に、答えを出す助けとなるからだ。

上述のようなコンピューターは実在していない。2016年に英国の大学に所属する4人の物理学者が創業した企業、サイクオンタム(PsiQuantum)のアイデアの産物である。資金力豊かな競合他社が同様の空想的なビジョンを掲げてひしめくこの分野において、サイクオンタムはその約束を最初に果たすことを目指している。

1981年に物理学者のリチャード・ファインマンによって初めて構想された量子コンピューターは、それ以来長年の間、量子粒子の性質を利用することで医学研究から人工知能(AI)まであらゆることをスピードアップすると期待されてきた。1か0のいずれかにしかなれない通常のコンピューターのビットとは異なり、量子ビットは同時に複数の状態で存在することができる。そのような量子ビットを十分な数、組み合わせることで、現在の従来型コンピューターでは到底対応できないタスクの処理が可能なコンピューターを生み出せるかもしれない。しかし、現在最も優れたプロトタイプの量子コンピューターでさえ、何か有用なことをするには規模が小さすぎ、エラーも起きやすい。

それゆえに、サイクオンタムが自分たちのコンピューターで最終的にできるようになることを約束するのは、いっそう大胆に思える。同社が期待することの1つである、シトクロムP450酵素の影響予測について考えてみよう。シトクロムP450は、しばしば体内で薬物を分解する。製薬会社は、この酵素が特定の分子に対してどのように作用するのかより正確に分かれば、より効果的な薬剤をより迅速に開発できるかもしれない。特定の薬についてこのようなことを推定するには、現在の方法では10年以上かかる可能性があるが、「私たちはそれを4分に短縮することを目指しています」と、サイクオンタムの量子アプリケーション担当副社長であるフィリップ・エルンストは言う。

そのような多くの主張が飛び交う分野において、サイクオンタムは2つの理由で異例の投資と厳しい注目を集めている。同社は、大規模かつ有用な量子コンピューターの構築を直接目指している数少ない企業の1つであることと、すでに大手チップメーカーと提携し、既存の半導体製造工場を利用して独自システムの構築を進めていることである。同社のビジョンは支持を集め、勢いを増している。サイクオンタムは2025年に10億ドルの資金を調達し、シカゴで現地の自治体と協力して進める施設の建設に着工した。また、オーストラリアにも2つ目の拠点を置いており、2027年には稼働可能になる、つまり、ハードウェアの準備が整うことを約束している。さらに、どの量子技術企業が成功するか見極めるための集中的な政府評価プログラムにおいて、第3段階まで到達したのは2社だけであるが、サイクオンタムはその内の1社である(もう1社はマイクロソフト)。

サイクオンタムが自らの主張を実現できるかどうか評価することは、例えば製薬会社をその臨床試験結果で判断することよりも難しい。量子コンピューティングの進歩は漸進的で、明瞭ではなく、外部からの検証が困難なためである。しかし、サイクオンタムは今、それを証明する瞬間を迎えようとしている。長年にわたる非公開の研究と数億ドルの投資が、有用な量子コンピューターとして結実するのか、それともその期待に届かずに終わるのか、はっきりするのだ。早ければ2027年にも、その結果が分かり始めるかもしれない。

新たな種類の機械

サイクオンタムの4人の創業者の1人、テリー・ルドルフは、ボサボサ頭で優しい話し方をする人物だ。アフリカのマラウイ共和国生まれのルドルフは、最初の物理学の学位を取得したときに初めて、自分が著名な物理学者エルヴィン・シュレーディンガーの孫であることを知った。その後、ルドルフは10代の若者向けに量子コンピューティングについて解説する150ページの本を自費出版した(広報担当者はウインクしながら「実際に誰かがこれを読むとは期待していません」と言ってサイン入りの本をくれたが、私は面白くて役立つ本であると報告することができる)。

2014年頃、ルドルフら共同創業者たちは、理論上は可能であることが分かりつつあったこの量子分野のブレークスルーが、実際の機械でも可能かもしれないということに、確信を強めるようになっていた。彼らは最終的に大学を辞職し、直面していた課題を分担した。ルドルフは理論研究、マーク・トンプソンはエンジニアリング、ピート・シャドボルトは技術の規模拡大、ジェレミー・オブライエンはビジョンの明確化と投資家開拓を担当した(オブライエンは2月までCEO(最高経営責任者)を務めていたが、その後、半導体業界のベテランであるビクター・ペンと交代した)。

サイクオンタムが構築中の量子コンピューターがなぜ画期的なものになるのか理解するには、現代科学の多くにどれほどの曖昧さが残っているか考えてみるとよい。例えば、どのリチウムイオン電池が発火するのか、あるいは重要な航空機部品がどれくらいの速さで腐食するのか、確実に予測することはできない。

予測できないのは、それらのシステムが複雑だからということもあるが、それだけが理由ではない。それらのシステムは、その根本で、量子力学によって支配されているからだ。素粒子は、「この位置」や「あの速度」といった明確に定義された性質を持たず、その代わりに、多くの可能性にまたがって広がる量子状態として存在している。そしてその性質が、原子や分子のさまざまな挙動に影響を及ぼす。シュレーディンガー(前述したとおりルドルフの祖父)がこの曖昧さを数学的に記述する方法を示してから今年で1世紀になるが、現実世界のシステムに関してこの計算を正確に実行することは、たとえ最も優秀なコンピューターであっても、すぐに無理であることが判明する。科学者たちは、近似や不完全なシミュレーション、あるいは動物での実験を用いて、このギャップに対処している。

ファインマンやデヴィッド・ドイッチュら1980年代の物理学者たちは、量子力学の計算をするもっと良い方法はないだろうかと考えた。もしかすると、新たな種類の機械を使ってそのような複雑性をモデル化できるかもしれない。常にオンかオフかのいずれかの状態でしかないトランジスタを使うのではなく、量子状態に保たれた粒子を操作して計算を実行し、最後に測定して答えを得る機械である。量子システムを用いて量子システムをシミュレートすることで、現実を直接反映した物理学や化学のシミュレーションが初めて可能になる。それは、新たな薬や材料、あるいは量子力学の影響を受けるあらゆるものを設計するための、計り知れないほど貴重なツールとなるだろう。つまり、革命的なことである。

自然の仕組みに対する人類の理解の飛躍的な進歩が、しばしば強力な新しいツールの発明につながってきたと、ルドルフは私に話した。「産業革命と同時期に、ニュートン力学の法則、熱力学の法則、古典電磁気学の法則を計算・シミュレートできるようになったのは、偶然ではないと思います」と、ルドルフは言う。「物事を計算し、シミュレートし、理解する能力が高まるたびに、私たちはそこから驚くべき機械を作り上げます」。ルドルフは、量子コンピューターでも同様のことが起こると考えている。

光子を追いかける

これまでずっと解明できていなかった課題の1つは、イオンや原子、あるいは量子の性質を持つように設計されたまったく新しい人工物のうち、どの量子的なものが、量子コンピューティング界の基本単位である量子ビットとして使えるほど、十分に安定的かつ制御可能にできるか、という問題である。量子システムはデリケートであり、特定の粒子を観測すると、その粒子は複数の状態の重ね合わせではなく、1つの状態に収束してしまう。それが計算の終了時ではなく計算中に起こると、エラーが発生し、訂正が必要になる。こうしたエラーが多す …

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