フラッシュ2022年12月16日
充放電時に格子体積が変化しない電池材料、横国大など開発
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]横浜国立大学、LIBTEC、高輝度光科学研究センター、茨城大学、ニューサウスウェールズ大学の研究グループは、充放電時格子体積が変化しない電池材料を開発した。一般的な電池材料では、充放電時に酸化還元反応が発生するとともに、リチウムの脱挿入も起こる。その結果、格子体積が大きく変化する。固体電解質を採用する全固体電池では、この点が大きな問題となる。
研究グループは独自に岩塩型構造を有するリチウム過剰バナジウム系正極材料(Li8/7Ti2/7V4/7O2)を開発した。従来のコバルト・ニッケル系材料と比較すると高容量であり、なおかつ充放電時にリチウムが脱離したときは固体中のバナジウム・イオンが移動して格子体積を維持する。格子体積を維持する仕組みは大型放射光施設SPring-8のBL04B2とBL19B2で確認している。
今回開発した材料に硫化物固体電解質を組み合わせた全固体電池を試作したところ、従来の層状材料を使用した電池よりもサイクル寿命が優れており、400サイクル後でも電池の特性が劣化しないことを確認できたとしている。
研究成果は12月13日、ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials)誌にオンライン掲載された。今後の研究の進展によって、実用的な全固体電池が実現することが期待できるという。
(笹田)
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