フラッシュ2023年3月14日
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東大など、超伝導の新たなメカニズムの検証に成功
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学や岡山大学らの共同研究グループは、量子液晶状態における電子の揺らぎが超伝導に与える影響を調べるうえで、近年注目されている鉄系超伝導体(鉄原子を含む超伝導物質群)の上部臨界磁場を測定することに成功。量子液晶揺らぎ(量子液晶状態の量子力学的な揺らぎ)によって超伝導電子対の結合の強さが増強されることを実験的に明らかにした。超伝導は無数の電子が何かしらの相互作用を介してそれぞれペアを組んで電子対を形成している状態であり、この相互作用を具体的に特定することが超伝導を理解する上での核心であるという。
研究チームは今回、超伝導状態の物質に磁場をかけていくと、ある大きさで超伝導が消失する性質に着目。鉄系超伝導体のひとつであるFe(Se,Te)の超伝導が消失する磁場の大きさ(上部臨界磁場)を測定し、超伝導が磁場を大きくしていくとどのように変化していくのかを調べた。その結果、磁場が大きくなるにしたがって超伝導状態が徐々に縮小し、そこでは強い量子液晶ゆらぎが発達していることを発見。量子液晶揺らぎによって、超伝導電子対の形成を促す相互作用が強くなることを実証した。
超伝導は物質の電気抵抗が低温で消失する現象で、リニアモーターカーや医療用MRI(核磁気共鳴画像法)に使用されているほか、ロスのない送電線への応用も期待されている。今回の成果は、「量子液晶揺らぎによる電子対形成」という新しいメカニズムによる超伝導が実現可能であることを示すものであり、これまでよく知られている磁気的な揺らぎによる超伝導と比較することで、超伝導の発現機構に対する理解が大きく進展することが期待される。
研究論文は米国科学誌フィジカルレビューX(Physical Review X)に2023年3月6日付けでオンライン掲載された。
(中條)
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