フラッシュ2023年5月1日
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九州大など、タンパク質合成を助ける複合体の機能を発見
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]九州大学、新潟大学、理化学研究所、東京大学の研究グループは、タンパク質合成を助ける「ASC-1複合体」の機能を発見した。タンパク質の合成では「走査リボソーム」がmRNA上の翻訳開始点を探しながら進み、翻訳開始点が見つかったところで「翻訳リボソーム」がタンパク質を合成していく。これまで、翻訳リボソームに結合したASC-1複合体が、リボソーム衝突を解消することでタンパク質合成を助けていることは分かっていたが、走査リボソームについては翻訳リボソームに比べてmRNAへの結合が弱く、解析が進んでいなかった。
研究グループは、走査リボソームとmRNAの結合を強めてから、走査リボソームを含む部分を回収する手法である「Sel-TCP-seq法」(Selective Translation Complex Profile Sequencing)に注目。この手法を応用することで、走査リボソームに結合しているタンパク質を網羅的に同定できるのではないかと考え、Sel-TCP-seq法を基にした「Sel-TCP-MS法」を新たに開発。開発した手法でヒト培養細胞を解析してみた結果、走査リボソームにASC-1複合体が結合していることが明らかになった。
ASC-1複合体を欠損した細胞を作成したところ、走査リボソームが減少したり、mRNA上で引っかかって進めなくなったりすることが分かった。ASC-1複合体は、mRNAの固い構造を解くことで、走査リボソームが引っかかることなくmRNA上を進めるように補助しているという。
研究成果は4月24日、欧州分子生物学機関誌に掲載された。翻訳リボソームとその結合タンパク質の異常が神経変性疾患などさまざまな疾患の原因であることが分かっているが、走査リボソームとその結合タンパク質の疾患との関係についてはあまり解析が進んでいない。今回の研究成果により、走査リボソームとその結合タンパク質が関係する疾患発症機序が新たに判明する可能性があるとしている。
(笹田)
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