フラッシュ2023年6月20日
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iPS細胞で臓器移植後の拒絶反応を抑制する細胞=北大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]北海道大学の研究チームは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から造血幹・前駆細胞(iHSPC:iPSC-induced Hematopoietic Stem/Progenitor Cell)を分化誘導し、この細胞を利用して移植後の拒絶反応を抑制することに成功した。臓器移植を受けた患者は、拒絶反応を抑制するために免疫抑制剤を生涯にわたって服用し続ける必要があり、iPS細胞を利用した移植でも、ドナーとレシピエントが異なる場合は同じように拒絶反応が起こることが問題になっている。
研究チームは、免疫抑制剤を使うことなく、移植臓器を生着させる手法として、研究途上にある手法である「免疫寛容の誘導」に着目。特に、ドナーの造血幹細胞をレシピエントに注射し、一時的もしくは永続的に血液細胞がレシピエントの体内に共存する状態(キメラ)を作り出した上で、臓器を移植する手法に注目した。この手法は、ヒトの臨床試験でも成功例が存在する。
ただ、先行する研究結果によって、iPS細胞から造血幹細胞を誘導することは困難であることが判明していた。そこで研究チームは、血液細胞の増殖や分化に重要な役割を果たすことが先行研究で判明している少数の転写因子に注目し、それらの転写因子をiPS細胞に導入する手法を採った。
具体的には「Lhx2」と「Hoxb4」の2種類の転写因子をマウスのiPS細胞に導入、その細胞からiHSPCを分化誘導し、iPS細胞を採取したマウスとは異なるマウスに注射した。その結果、注射の20週間後もiHSPCに由来する血液細胞がマウスの体内で生存しており、キメラ状態を誘導できた。このマウスにiPS細胞を採取したマウスから皮膚とiPS細胞そのものを移植したところ、免疫抑制剤を使うことなく生着したという。以上の結果から、ドナーのiPS細胞からiHSPCを誘導し、適切にレシピエントに投与することで、免疫寛容状態を作り出せることが明らかになった。
研究成果は5月25日、アメリカ移植ジャーナル(American Journal of Transplantation)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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