フラッシュ2023年6月27日
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ワイン誕生の謎に迫る、酵母が果皮に適応する仕組みを解明=京大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学の研究チームは、ワイン作りに欠かせない酵母がブドウ果皮に適応する現象を実験室内で再現することに成功。ワインの起源と考えられる自発的な発酵プロセスにおいて、本来ブドウに常在していない酵母がブドウ果皮に付着してうまく適応して生育し、自発的にアルコール発酵するようになるための条件を解明した。
研究チームは今回、伝統的な自家製パン生地に用いられる「レーズン酵母」に着目。実際に市販のレーズンからレーズン酵母を作製し、その中の微生物叢(微生物の集団)をメタゲノム解析と呼ばれる手法により調べたところ、高いアルコール発酵能を有する酵母がレーズンに高確率で存在し、優占的な生育を示すことを明らかにした
そこで同チームは、ワイン酵母がほぼ存在しないブドウからレーズンへと変化する過程で、果皮においてワイン酵母が生育するという仮説を立てて検証実験を実施。ワイン酵母が自発的に発酵をするためには、ワイン酵母が周囲の環境などからブドウ果皮に付着することと、ブドウ果皮常在菌のサポートによりブドウ果実内部の糖分にアクセスすることが鍵を握ることを示した。
これまで、ブドウの果皮にはアルコール発酵するワイン酵母が存在し、ブドウを搾汁する過程でこの酵母が果汁中に移行し、自発的にアルコール発酵が開始されるとされてきた。だが、近年のより精密な解析の結果、傷のない健全なブドウの果皮には高いアルコール発酵能を有する酵母がほとんど生育していないことが明らかとなり、ワイン酵母がブドウ果皮に適応するためのメカニズムは謎であった。
研究論文は、英国の国際学術誌サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)に2023年6月20日付けでオンライン掲載された。
(中條)
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