フラッシュ2023年11月21日
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コンピューティング
住友電工、世界最高出力密度の窒化ガリウム・トランジスタ
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]住友電気工業(住友電工)は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業の一環で、従来品に比べて出力密度を2倍以上に高めた窒化ガリウム・トランジスタを開発した。
従来の窒化ガリウム・トランジスタはGa極性の窒化ガリウムを使うことが多い。N極性の窒化ガリウムには、素子設計の自由度が高まり、二次元電子濃度を容易に上昇させることができる利点があるが、ヒロックと呼ぶ結晶欠陥が発生しやすいため結晶品質を高めることが難しく、加えて高品質なゲート絶縁膜が必要という課題があった。
今回の研究ではヒロックのない高品質なN極性結晶を実現し、電子を供給するバリア層などの最適化を進めることで、シート抵抗が極めて低い結晶成長を実現した。二次元電子とオーミック電極の間に高濃度n型ドープ層を挿入することで、オーミック電極の接触抵抗を低減させた。さらに、ハフニウム(Hf)系のゲート絶縁膜の高品質化技術も投入して、出力密度を飛躍的に高めた。
開発した窒化ガリウム・トランジスタは、最大電力が2A/mmを超え、耐圧も60V以上に向上させ、大電流と高耐圧を両立した。高周波数特性は、測定周波数28GHzで最大出力29.8dBmに達し、トランジスタのゲート幅で換算すると最大出力密度が12.8W/mmに達した。従来品の2倍以上であり、N極性を採用した窒化ガリウム・トランジスタとしては世界最高になる。
研究成果は、11月12〜18日に福岡市で開催された第14回窒化物半導体国際会議で発表された。
(笹田)
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