フラッシュ2024年2月26日
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生物工学/医療
ケタミン誘導体が持つ抗うつ作用の仕組みを解明=京大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学、名古屋市立大学、マウントサイナイ医科大学の研究グループは、ケタミン誘導体が持つ抗うつ作用の仕組みを解明した。麻酔薬であるケタミンは、低用量で投与すると即効性かつ持続性の抗うつ作用を持つ。ケタミンには依存性や幻覚などの重篤な副作用があるが、ケタミン誘導体は副作用が少なく、安全性が高いと考えられている。
研究グループは、心理社会的ストレスを与え、うつ状態と考えられる行動異常を示したマウスに、ケタミン誘導体であるS-HNKを投与し、一定の時間を置いた後にそのマウスの行動を再度評価した。その結果、S-HNKを投与したマウスは30分後に抗うつ作用が認められ、その効果は28日間持続した。
S-HNKを投与したマウスを対象に、Fos発現マッピングで脳内神経活動を調べた結果、視床室傍核に特徴的な活動が確認された。視床室傍核の機能を人為的に抑制したマウスを作成したところ、S-HNKによる持続的な抗うつ作用は現れなかった。反対に、視床室傍核の機能を人為的に活性化したところ、S-HNK投与マウスに類似した抗うつ効果を確認した。以上の結果から、視床室傍核がS-HNKによる持続的な抗うつ作用に欠かせない脳領域であることが分かった。
研究チームはさらに、S-HNKによる持続的な抗うつ作用に関係する、視床室傍核における分子メカニズムを解析した。解析の結果、①ストレス負荷がかかると視床室傍核グルタミン酸作動性ニューロン内でGnb3遺伝子の転写が進行し、うつ状態を誘発していること、②S-HNKを投与すると視床室傍核でGABAA受容体の発現が増加し、視床室傍核グルタミン酸作動性ニューロンを持続的に抑制すること、③視床室傍核ではヒストン脱メチル化酵素KDM6の核外移行が促進され、ヒストンメチル基転写酵素EZH2が優位に働くこと、④Gnb3の発現が低下して、抗うつ作用が現れること、などが明らかになった。
研究成果は2月19日、ニューロン(Neuron)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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