フラッシュ2024年5月23日
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KEKなど、素粒子「ミュオン」の高指向性ビーム生成に成功
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]高エネルギー加速器研究機構(KEK)、岡山大学、名古屋大学などの共同研究チームは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)において、電子に似た素粒子の1つである「ミュオン(ミュー粒子)」を光速の約4%まで加速する技術の実証に成功した。
現在、陽子加速器で生成できるミュオンは、陽子、パイ中間子を経た「孫粒子」なので、向きや速さがバラバラになっている。ミュオンそのものを加速器で向きや速さをそろえて加速できるようになれば、素粒子物理学や物質生命科学など様々な分野での活用が可能となる。だが、ミュオンの寿命は2マイクロ秒(100万分の2秒)ほどしかないうえ、電子より200倍重いため、実現が技術的に難しく、成功例はこれまでなかった。
研究チームは今回、陽子加速器でできた光速の30%程度の速さを持つ正ミュオン(プラスの電荷を持つミュオン)をシリカエアロゲルと呼ばれる材料に打ち込んだ後、レーザーを照射することで、光速の0.002%という「ほぼ停止状態」まで冷却された正ミュオンを生成。その後、高周波電場をかけて改めて正ミュオンを加速することにより、向きと速さのそろった指向性の高いミュオンのビームを作った。
同チームによると、ミュオンの加速技術にめどがついたことで、世界で初めての「ミュオン加速器」の実現が視野に入り、加速されたミュオンを使ったさまざまな研究が進むことが期待されるという。
(中條)
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