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GOP Embraces Geoengineering ... Which Terrifies Geoengineers

地球工学は気候変動の特効薬ではない、科学者グループが反発

気候変動の背景となる科学を厳しく否定している共和党のラマー・スミス議員は、米国のエネルギーシステムを改革することなく、気温上昇の危険性を避ける方法があると主張している。

「気候変動の進行につれて、地球工学は影響を抑制する道具になる可能性があります」とスミス議員(テキサス州選出)は、11月8日に開かれた地球工学に関する小委員会の聴聞会で発言した。地球工学は、地球温暖化のリスクを相殺するために気候を意図的に変えるさまざまな技術的手段を包括する言葉(ブランケット・ターム)だ。

「実行不可能でコストのかかる政府による規制を米国国民に強制するのではなく、気候変動への対処をリードするテクノロジーとイノベーションを検討する必要があります」とスミス議員は付け加えた。

地球工学の研究者は、スミス議員の提案をトランプ政権や共和党が採用する可能性について懸念を強めている。スミス議員の提案は、温室効果ガスの排出削減やエネルギー産業の行動を改める必要性を回避するための「技術的修正」として、地球工学を採用するというものだ。

実際に成層圏注入や雲の白色化、人工降雨などの地球工学テクノロジーの可能性を探求してきた科学者は、これらの未試験の手法では、化石燃料から移行するためのアディショナルタイムを稼ぐといった、限定的な範囲でしか気候変動の影響を減らせない(「The Growing Case for Geoengineering」参照)。

他の課題においても、地球工学がどれくらいうまくいくのか、あるいはどのような悪影響があるのか、まだ分かっていないのだ。 海洋酸性化などの気候変動の大規模な影響にもほとんど対処できない。

「地球工学は特効薬ではなく、気候変動のリスクをさらに大幅に増加させる可能性があります」と、20人の有力な科学者で構成されるグループは、スミス議員らに文書で警告した。

ハーバード大学のデビッド・キース教授は、 MIT テクノロジーレビュー主催のカンファレンス「EmTech」へ登壇中に今回の不測の事態について警告した。共和党が地球工学テクノロジーを取り入れたとしても、地球工学分野の科学者と、研究を一時的に支援した主要な環境団体の脆弱な連合は崩壊するだろうと述べた。

「ある意味、私たちが最も恐れているのはトランプ大統領のツイッターでの発言です。『太陽光地球工学で万事解決! 素晴らしい! もう排出ガスは削減しなくていい』などと書かれてしまわないかと」。文書にも署名したキース教授は、地球工学の潜在的可能性について広範な研究に取り組んでいる( 「A Cheap and Easy Plan to Stop Global Warming」参照)。「賢明な方法を実行することが本当に難しくなってしまいます」とキース教授は言う。

ジェームス・テンプル [James Temple] 2017.11.13, 21:26
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