KADOKAWA Technology Review
×
AIはどこまで成長したか?
データで見るブームの実態
Nine charts that really bring home just how fast AI is growing

AIはどこまで成長したか?
データで見るブームの実態

人工知能(AI)技術の急速な進歩は、産業や社会に大きな影響を及ぼしているが、誇大広告も多く、実態を把握することは容易ではない。マサチューセッツ工科大学やハーバード大学の研究者たちが、AIブームに関するさまざまなデータをまとめた報告書を公開した。 by Will Knight2018.12.27

人工知能(AI)に関する誇大広告が広まる現在、実際の状況を知るのは難しい。だが幸運なことに、AI政策の研究者らがAIブームに関するさまざまなデータをまとめた報告書を公開してくれた。

この報告をまとめたマサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学、ハーバード大学や、オープンAI(OpenAI)をはじめとする非営利団体に属する著者たちによる調査では、AIに対する投資、雇用、論文、特許、さらには政府の会合での言及も対象にしている。以下に、その抜粋を紹介しよう。

1. AIは目まぐるしい速度で商業化されている

AI関連スタートアップ企業には驚くほどの資金が流れ込んでいる。上に示したグラフの左側が米国のAI関連スタートアップ企業数、右側が米国のスタートアップ企業総数である。下のグラフの左側は米国のAI関連スタートアップ企業への投資額、右側は米国のスタートアップ企業への投資総額である。さまざまな産業において機械学習の利用に大きな可能性があると同時に、過剰な宣伝によって市場が過熱していることも示している。

2. 中心は中国と米国だが、欧州にも勢い

中国のAI技術(「国家レベルでAIに賭ける中国から何を学ぶべきか」を参照)と、高まる米国とのライバル関係についてはさまざまなことが語られてきたが、データが示すように欧州もAI研究開発の巨大なハブとなっている。3つの主要な中心勢力が出現しつつあるようだ。

3.「多様性」が重要な課題

多くの研究者が、AI研究に携わっている女性および人種的マイノリティに属する人たちの数が少ないことを指摘している。新しい報告書におけるデータもこれを裏付けており、AI関連職への女性の応募者の少なさ(上のグラフ)と、AI分野で教鞭をとる女性の割合の低さ(下のグラフ)が明らかになった。

4.最先端の技術は高速で進歩している

報告書には技術的進歩のいくつかの指標として、画像における物体認識の精度を平均的な人間の成績と比較したもの(上のグラフ)や、ニュース記事の機械翻訳を人間が評価した精度(下のグラフ)が掲載されている。人間レベルのAIの登場が近づいているわけではないが、ここ数年で機械学習の手法がいかにレベルアップしてきたかがグラフから見て取れるはずだ。

5.AIは政治的な課題でもある

米国議会(上のグラフ)および英国議会(下のグラフ)におけるAIおよび機械学習への言及は、ここ数年で爆発的に増加している。AIテクノロジーの経済的および戦略的な重要性に対する意識の高まりを反映したものと言えそうだ(「AIのルール作り主導、カナダとフランスが政府間パネルを発表」を参照)。

 

より詳しい情報やオリジナル・データを確認したい場合は、AIインデックス(AI Index)のサイトを参照してほしい。

人気の記事ランキング
  1. A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
  2. The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
  3. Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
  4. Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
クレジット All charts from the AI Index
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る