KADOKAWA Technology Review
×
Humans Will Bully Mild-Mannered Autonomous Cars

安全重視の自動運転車は、周りの自動車や歩行者、自転車にナメられる

運転者、歩行者、サイクリストは、リスク回避的な自動運転車を間抜け扱いすることがわかった。 by Jamie Condliffe2016.11.04

自動運転車の前に飛び出しても、止まってくれるはずだ。運転中に自動運転車を追い越せば、ブレーキを踏むに違いない。自動運転車に搭載されているわかりやすい安全機能は、人間に振り回されやすい。タクシーが全て自動運転になったとき、ニューヨークの道路は自転車がタクシーを気にせずに走れる夢のような場所になるだろう。

そのような事態を、ボルボは恐れている。ガーディアン紙の取材に対し、技術部門責任者のエリック・コリン上級リーダーは、近日中にロンドンで予定されている試運転で、興味本位で実験が妨害されないよう、自動運転車とは表示しないつもりだという。

「表示があれば、面白半分で急ブレーキを踏んだり、邪魔をする人が出てくるに決まっています」

実際、グーグルでは既に同様の問題があった。自動運転車が非常に消極的な場合、一時停止標識の前からなかなか前進できず、立ち往生している間に後方車に追い越されてしまうケースがあった。標識の前で止まってしまう問題の解決策として、グーグルは人間が意思表示するのと同じように、交差点で少しずつ自動運転車を前進させることにした。

If you want to make a driverless car stop, just drive right in front of it.
自動運転車を止めたければ、目の前に割り込めばいい

自分勝手で乱暴な運転をする人は常に存在するから、自動車を人間と同じくらい図々しくしても、解決にはならない。かえって事故の原因になってしまう。実際、ディスカバー誌の記事によれば、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の調査によって、自動車を「荒っぽく」運転する人ほど、自律自動車の導入を好ましく思っていると判明した。簡単に自律自動車を出し抜けると、その種の人が思っているのが原因かもしれない。

歩行者も、運転者と同様だ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校による新たな研究では、ゲーム理論で歩行者と自律型移動手段がどう影響するかをモデル化した。基本的には日常的に発生する、歩行者と対向車のチキンレースに理論的な考えを少し加えたモデルだが、結論はどうなったか? 報告書を執筆したアダム・ミラード=ボール助教授によれば「自律型移動手段はリスク回避的に動作するため(略)歩行者は堂々と振る舞うようになり、自律型移動手段により、歩行者優先の都市近郊部が(自律自動車も優先するように)変化するかもしれない」という。

注意深い自律自動車を振り回すような態度は、路上のあらゆる人がとりそうだ。たとえば、グーグルは以前、同社の人工知能(AI)システムは自転車を認識でき、自転車のそばを走るときは注意深く運転するよう訓練したと説明していた。しかし、オースティンでサイクリストがグーグルにした報告では、近くに自転車がいて警戒装置が働いたことが原因で、自動運転車は出発できなかったという。

もちろん、人間もある程度は注意しないといけない。自律自動車が普及するまで、遠くからは車両が自動運転車なのか判断しにくく、(どうせ優先してもらえるだろうと思って)車の列に突っ込んでいくのは危険だ。研究者はこの種の問題の一部は解決できる。自動運転車に人間ぽい運転操作や、本格的なクラクション音を搭載して、人間らしい操作に近づければいいのだ。

だが、何らかの倫理的ジレンマに左右されない限り、自律自動車は事故を防ぐように訓練されるだろう。そうなれば、人間が自分に都合よく行動しないわけがない。

(関連記事:Guardian, Journal of Planning Education and Research, Discover, “なぜ自動運転車は人間ぽく動作する必要があるのか?,” “How to Help Self-Driving Cars Make Ethical Decisions,” “Outta My Way! How Will We Translate Google’s Self-Driving Honks?”)

人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
タグ
クレジット Photograph by Mark Wilson | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  4. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る