KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
Novelty of Driverless Cars Wears Off Quickly for First-Timers

なぜ自動運転車は人間ぽく動作する必要があるのか?

ニュートノミーは、無人運転タクシーの「世界最大で最もお金をかけたフォーカスグループ」をシンガポールで運営している。 by Will Knight2016.10.19

無人運転車はどの程度人間ぽくすればいいのか?

シンガポールで無人運転型タクシーサービスを立ち上げたニュートノミーは、この疑問に答えようとしている。「不気味の谷」(ほとんど人間のように見えるが、十分には人間らしくないロボットに対する人間の感情的反応)の自律自動車版といってもいいだろう。

「好むと好まざるとにかかわらず、私たちは、プログラムどおりに運転する自動車の開発と、人間ぽく運転する自動車の開発との間にある谷に橋をかけなければなりません」とニュートノミーのカール・ラネンマCEOは18日、マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されたEmTech MIT 2016で発言した。「明確な答えがあるわけではなく、人によって求める人間ぽさは異なります。私が研究しているのはそういうことなのです」

Karl Iagnemma, CEO and CoFounder, nuTonomy
ニュートノミーのカール・ラネンマCEO兼共同創業者

ラネンマCEOは、ニュートノミーは、テクノロジーに対する社会全体の反応を調べるためにサービスを始めたという。自動運転がどれだけ早く事業化できるかは、社会全体の受け止め方によって大きく変わるため、ニュートノミー等、自動運転を一般的に試用させている企業によるこうした探求は非常に重要だ。

「これは世界最大の、最もお金をかけたフォーカスグループ(ある商品、サービスへの意見をグループに対して質問することで得るマーケティング手法のひとつ)だと思ってください。極めて価値がある研究であり、情報を得るためにこれ以外の方法はありません」

ニュートノミーだけが無人自動車に取り組んでいるわけではない。しかしニュートノミーは、数週間前から一般的に利用可能な乗車サービスを提供した世界初の企業で、ウーバーは、その後、ピッツバーグのサービスで後に続いた(「試験中の自動運転タクシーはしばらく試験中のままな理由」参照)。

ラネンマCEOは、乗車した人々は急角度で上向きの受容曲線を示す、という。つまり、自動運転タクシーの最初の乗車から数分間は落ち着かない様子だが、すぐに満足感を得て、最終的には退屈に変わる。ただし、特に非人間的な運転動作に驚いて、居心地の悪さを感じることがまだあるという。

「私たちの最初の無人乗用車は、軌道を走る路面電車のように(ただまっすぐ)運転していたようです。このような違和感は人々を排除してしまいます。今、私たちは(違和感を減らすことが)極めて重要だと深く理解しています」

米国のいくつかの都市でグーグルが試験中の無人自動車運転(おそらく最も目立つ実験だ)は、運転動作の重要さを明らかにしている。自動車が信号で止まってから発進する際の不自然な動きは、確実に事故を招いてる(“Google’s Self-Driving Car Probably Caused Its First Accident”参照)のだ。

無人自動運転は、さまざまな文化に適合した運転をする必要もあるだろう。たとえば、カリフォルニア州の道路で訓練された自動車は、厚かましさで悪名高いボストンやニューヨークなどの路上では、あまりにのんびりした運転をするかもしれない。

ニュートノミーのシンガポールでの実験は、ウーバーや他の無人タクシーが直面する、別の問題も提起している。ラネンマCEOは、タクシーサービスの人間的な側面(乗客が荷物を載せるのを助けしたり、忘れ物の携帯電話を返却したりすること)に対して、無人自動運転車はなんらかの代替策を考えていく必要がある、という。

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る