KADOKAWA Technology Review
×
機械学習で「真の知性」を持つ機械は作れない、元ワトソン開発者
Ms. Tech
ニュース Insider Online限定
The man who helped invent virtual assistants thinks they’re doomed without a new AI approach

機械学習で「真の知性」を持つ機械は作れない、元ワトソン開発者

AIアシスタントで使われている自然言語処理テクノロジーは日常生活にますます浸透している。だが、IBMのワトソンの原型を開発したMITの研究者は、真の知性を備えた機械を創造するというAIの最終目標からはほど遠いという。 by Will Knight2019.03.20

シリ(Siri)、アレクサ(Alexa)、グーグル・ホームなど、自然言語解析テクノロジーは日々の生活にますます浸透している。

だが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のボリス・カッツ主任科学研究員による評価はあまり芳しくない。カッツ主任科学研究員はこれまで40年以上、機械の言語処理能力の発展において重要な貢献をしている。1980年代には、自然言語による問い合わせ応答システム「スタート(START)」を開発した。STARTに使われたさまざまなアイデアは、IBMのワトソンが米人気クイズ番組『ジェパディ!』でクイズ王に勝利するのに役立ち、現在のおしゃべりな人工知能(AI)アシスタントの基礎を築いた。

カッツ主任研究員はいま、機械による自然言語処理分野が数十年前のアイデアに依存している状況を懸念している。数十年前のアイデアに固執している限り、真の知性を持つ機械を作り上げることはできないと考えているのだ。カッツ主任研究員に現在のAIアシスタントの限界と、AIアシスタントの知能をさらに向上させるためにはどのような研究が必要なのかを聞いた。

——コンピューターに自然言語を扱わせることに興味を持った経緯を教えてください。

モスクワ大学に学部生として通っていた1960年代にコンピューターと出合いました。当時、私が使っていた機械はBESM-4というメインフレームで、8進数コードしか使えないものでした。最初のプロジェクトでは、数学の問題を読み、理解し、解かせることをコンピューターに教えました。

その後、詩を作るコンピュータープログラムを開発しました。機械室の中に立って、機械が次にどんな詩を作り出すのか待ち構えていたのをいまでも覚えています。機械が作り出した詩の美しさに驚きました。知性のある存在が生み出したものであるかのように思えました。その頃から、この先、一生をかけて知性を持つ機械作りに取り組み、機械とやり取りできる方法を見つけ出したいと思っていました。

——シリ、アレクサ、その他のパーソナル・アシスタントについてはどうお考えですか?

その件についてお話しすると、ちょっとややこしくなります。一方では、パーソナル・アシスタントの驚異的な進歩をとても誇りに思っています。何年も前に私たちが開発を支援したのが、色々な形で組み込まれているからです。それはすばらしいことです。

しかし、もう一方では、パーソナル・アシスタントのプログラムはあまりに頭が悪いので、誇りに思うと同時に、ほとんど恥ずかしくなります。人々が知的だと思うものを作り出したものの、実際は知的な存在からはかなりかけ離れているからです。

——機械学習のおかげでAIは大き …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る