KADOKAWA Technology Review
×
「一塩基編集」で1万超の遺伝子を改変、ハーバード大が新記録
Wolfgang Kumm | AP images
ニュース 無料会員限定
Genome engineers made more than 13,000 CRISPR edits in a single cell

「一塩基編集」で1万超の遺伝子を改変、ハーバード大が新記録

ジョージ・チャーチ教授率いるハーバード大学の研究チームは、これまでで最多となる1万3200もの遺伝子編集を1つの細胞に対して実施した。最終的には、あらゆるウイルスに対して免疫を持つ人間移植用の臓器や組織の作製を目指すという。 by Antonio Regalado2019.03.28

遺伝子編集ツール「クリスパー(CRISPR)」の発明によって、科学者たちはゲノムの特定の箇所のDNAを改変できるようになった。しかし、CRISPRによる精密な修正は、一度に1カ所ずつしかできないことが多い。

それが過去の話になる日も、そう遠くないかもしれない。ハーバード大学の研究チームが、CRISPRを用いて、遺伝子編集技術の分野において史上最多となる1万3200もの遺伝子編集を、1つの細胞に対して実施したことを発表した。

遺伝学者のジョージ・チャーチ教授が率いる同研究チームは、現在よりはるかに大規模な遺伝子の書き換えの実現を目指している。最終的に人間までをも含む種の「根本的な再設計」につながる可能性があるという。

大規模な遺伝子編集はこれまでにも試されてきた。2017年、ポール・トーマス教授が率いるオーストラリアの研究チームは、マウスのY染色体に複数の遺伝子編集を施して、Y染色体の存在を消すことに成功した。この手法は、余分な染色体により引き起こされるダウン症候群の治療に使える可能性があると目されている。

遺伝子編集の新記録を打ち立てるため、ハーバード大学の研究チームのメンバーであるオスカー・キャスタノンとコーリー・スミスは、CRISPRを用いて、ヒトゲノムに散在する謎の多い反復配列である「LINE-1」と呼ばれるDNA配列を標的にした遺伝子編集を実施した。自己複製能力を有するこの遺伝子配 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る