マスクのニューラリンクは
どこが「新しい」か?
発表内容から読み解く
イーロン・マスクが創業したニューラリンクが発表した脳コンピューター・インターフェイスは、一体何が新しいのか? 専門家に同社の発表内容について聞いた。 by Antonio Regalado2019.07.22
7月16日の深夜、イーロン・マスクのファンとアンチたちは、インターネットに釘付けだった。テスラ(Tesla)のCEO(最高経営責任者)を務める億万長者のマスクが、ニューラリンク(NeuraLink)による初の公開プレゼンテーションをインターネットでライブ中継したのだ。ニューラリンクは、人間の脳をコンピューターにつなげるという劇的な(だが、まったく目新しいとは言えない)目標を掲げ、マスクが2年前に立ち上げた企業だ。
ニューラリンクはどのような方法を取ったのだろうか?
3時間におよぶライブ中継は、マーケティング的なショーと無味乾燥な技術解説で構成され、マスクとニューラリンクのチームは、社運を賭けて開発中の脳機械インターフェイスの設計について説明した。脳の中に数十本の細いワイヤーを取り付け、脳の中の信号を収集するというものだ。近く、麻痺患者の脳に取り付け、思っていることをタイプできるかどうか実験するという。最終的な目標は、これらのワイヤーを、耳の後ろに補聴器のように装着できる思考トランスミッターに接続することだ。
ニューラリンクのテクノロジーが実際のところどれほど新奇性があり、高度なものなのか? MITテクノロジーレビューは発表翌日、複数の専門家に問い合わせた。答えは、ニューラリンクの脳インターフェイス・システムは最先端ではあるものの、未解決の非常に困難な問題をいくつも抱えているというものだった。アルファベット傘下のディープマインド(Deepmind)に勤務する神経科学理論家であるアダム・マーブルストーン博士は、ニューラリンクを「装備を整えたが、実際にはまだ山に向き合っていない登山隊」にたとえた。
https://twitter.com/AdamMarblestone/status/1151366525762375680
ニューラリンクの何が新しく、何がそうでないか? MITテクノロジーレビューが専門家の意見をもとにまとめた結論は以下の通りだ。
全般的なアイデア:新しくない。 科学者らはおよそ15年前から、脳インプラントを患者にテストし、コンピューターのカーソルやロボットアームを動かせるようにしてきた。だが、それが実施されたのは研究の場だけだった。
設計のアプローチ:「概念的にはすばらしいです。 脳コントロールは、研究室から社会に出て実用化される必要があります」と語るのは、ピッツバーグ大学の脳インターフェース研究者であるアンドリュー・シュワルツ教授だ。シュワルツ教授は以前、2人の麻痺患者が心に念じることで器用なロボットの腕をコントロールする実験に成功した。だが、この実験装置は、2人の患者の頭に太いワイヤーを挿入する非常に複雑なもので、研究室の外に持ち出すのは不可能だった。シュワルツ教授は、ニューラリンクはより有用な脳インプラントを実現するための適切な工学的問題に取り組んでいるよう見えるが、「どれほど現実的なのかは分かりません」と言う。
プロセッサー: ニューラリンクは、ニューロンからの電気的ノイズを鮮明なデジタル信号に変えるための、小型の専用コンピューターチップを紹介した。ビット …
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