KADOKAWA Technology Review
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宇宙ビッグデータで描く、
近未来社会地図
Naoto Okubo
イノベーション・ストーリー 「イノベーション・ストーリー」はMITテクノロジーレビューの広告主および選定パートナーによって提供されています。
We draw the near future social map with space big data

宇宙ビッグデータで描く、
近未来社会地図

これまで文字どおり手の届かなかった「宇宙」のビッグデータがいま、身近な存在となりつつある。誰もが衛星データを使えるようになったとき、私たちには何が可能になるのだろうか? by MIT Technology Review Japan2019.11.20Sponsored

ここ数年、人工衛星の打ち上げ数が世界的に急増している。2009年に65基だった年間打ち上げ数は、2013年に3桁台に乗り、2017年には一気に388基にまで達した。非営利団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」によると、地球軌道上で運用中の衛星の数は2019年3月時点で2,062。いかに急激に増えているかが分かる。

大きな理由には打ち上げコストの低廉化がある。従来の人工衛星は、1基あたり数百~数千kgの重さがあり、地表から2,000km以上離れた中軌道~36,000kmの静止軌道に乗せるものが主流だった。この場合、衛星1基あたりの打ち上げに数十億円かかる。人工衛星は国やごく限られた企業だけが使うものだった。

だが近年、半導体の集積度や性能の向上により、人工衛星の小型軽量化が実現。数十~数百kgの衛星を低軌道に大量に打ち上げることが可能になった。衛星の製造コストの低下に加え、今後はロケットによる打ち上げコストの大幅な低下も予測されている。

人工衛星の役割は、その目的から大きく「観測」「通信・放送」「測位」に分けられる。このうち、ビジネス利用の観点で注目したいのが、「観測」の領域だ。人工衛星から得た地球に関するデータはいわば「宇宙ビッグデータ」であり、「データの時代」といわれる今、さまざまな業界からの強い関心を引いている。

MITテクノロジーレビューでもここ数年、観測衛星データの利用をたびたび取り上げてきた。2016年には米国のスタートアップ企業が、米国航空宇宙局(NASA)の衛星画像を、海洋大気庁からの気象データや農務省からの作物の生育状況とを組み合わせて分析し、農業生産予測を先物取引の判断材料として情報産業に提供していると伝えた

ほかにも、米スタンフォード大学が、深層学習を用いて衛星画像を解析し、ソーラーパネルの設置場所を特定するシステムを開発したニュースや、サハラ砂漠の辺縁部に暮らす遊牧民向けに、通信事業者が衛星画像を分析して水場・餌場の位置情報を携帯電話に送るサービスを報じており、世界的な「衛星データのビジネス利用」の気運の高まりがうかがえる。

日本政府は2017年に「宇宙産業ビジョン2030」を策定し、民間による宇宙利用を促進する大方針を示した。質・量ともに高まり続ける衛星からのビッグデータと地上で集めたビッグデータを使い、時期を同じくして発展してきたAI関連技術である深層学習を用いて解析することで、さまざまな分野の課題解決に役立てるだけでなく、ビジネスの競争力強化につなげるとしている。

Tellusが衛星データを誰もが使えるものにする

経済産業省は「宇宙産業ビジョン2030」の実現に向けて、衛星データ利用を広く一般に開放してビジネス利用を促進するさまざまな取り組みを進めている。その中核が、日本発のクラウド上で衛星データの分析ができる衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」である。

これまで衛星データは扱いが難しく、限られた人のものだった。機関や事業者ごとに散在し、データ容量が大きいため、解析するにも極めて高スペックのコンピューターを必要とした。

そのような衛星データをクラウド上にまとめ、手軽に使えるようにすること、民間企業をはじめ研究機関、大学、個人まで、誰もが自由に多様な衛星データにアクセス可能にすることがTellusが果たす大きな役割だ。Tellusでは、衛星データを直観的な操作で閲覧できる「Tellus OS」、衛星データの画像解析や機械学習を用いたアルゴリズム開発が可能な統合開発環境を用意しており、ユーザーのコンピューティング環境にとらわれない衛星データ利用を可能にしている。

マクロ×ミクロ、宇宙×地上データの掛け合わせから生まれるもの

Tellusは、12の衛星データと4つの地上データを提供している(2019年11月末現在)。衛星データといっても、センサーにはさまざまな種類があり、また、観測頻度や観測できる面積も異なるため、取得できる情報は異なる。

最も一般的なのは、光学センサーだ。人間の目と同じように地表にあるものの大きさや形、数などを捉えるほか、人間の目では見えない「近赤外」の領域の光も捕捉し、土地の被覆状況や農作物の生育状況、樹種の判別などができる。

SAR(Synthetic Aperture Radar)センサーも利用されることが多い。電波の一種であるマイクロ波を地表に向けて発射し、その跳ね返りを捉えるセンサーで、対象物の有無や材質、時間軸における変化などを捉える。光学センサーは雲があると地表が見えないが、SARは雲を透過し、夜間でも地表の様子を観測できる利点がある。ほかにも、地表温度を測る熱赤外センサーや、地面ではなく大気や降雨状況を捉えるセンサー、海域の海水温、風、海面高度などを測るセンサーなど、さまざまな側面から地球を観測している。

マクロ × ミクロ、衛星データ × 地上データ
「Tellus」で広がるニュー・ビジネスの可能性

Tellusでは「地上データ」も扱える。そのうちの1つが携帯電話の接続先の基地局の情報を基に、その地域にいる人口を推定した「モバイル空間統計」のデータだ。このデータを使うと、1時間ごとの地域別の推定人口の変化を追うことができるが、「なぜ移動したのか」はこのデータ単体では分からない。そこで、衛星からの気象データを照らし合わせてみると、たとえばその時、その地域に局地的に豪雨が降ったから特定の場所に人が流れたことが分かるかもしれない。衛星データと地上データの組み合わせによって、新たな課題やニーズの発見が促されることが衛星データを使う一つの利点だといえる。

さらに、気象庁が保有する日本全国の地域気象観測所(アメダス)が観測した降雨量、気温、風向、風速などの気象データ「アメダス1分値」や、経済産業省・内閣官房が提供する地域ごとの人口推移や産業動態のデータ「地域経済分析システム(RESAS)」を扱える。今後、Twitterのつぶやかれた内容や時間・位置などのデータもTellus上で提供される予定だ。

人工衛星は地上数百~数万kmの高い位置から地球を見下ろしているため、広域にわたる「マクロ」なデータを得られる。広大な森林や海域にまでセンサーを張り巡らせることはできないが、人工衛星ならそのような地域も含めて観測できるわけだ。すると、たとえば台風・地震などの自然災害があった際に土砂崩れの発生箇所を人工衛星から大まかに探索し、被害のありそうなところへドローンを飛ばして詳しい状況を把握するといったことも可能だろう。あわせて、地上の人流データを掛け合わせれば、避難状況も見えてくる。「マクロ」と「ミクロ」のデータを組み合わせれば、復旧や防災計画に役立てることもできる。

宇宙と無縁だったあらゆる業種の人たちが、Tellusを手に未来を描く

Tellusの開発に貢献し、ビジネス領域での衛星データ利用促進を目的とする「xData Alliance(クロスデータ・アライアンス)」が2018年7月に発足した。アライアンスに参画するのは、宇宙産業関連企業のみならず、商社やコンサルティングファーム、事業会社、ベンチャーキャピタル、研究機関・団体と幅広い。Tellusの「応援団」的存在の彼らは、データ提供や解析技術、新規ビジネス開発、投資など、全方位からTellusを支援する。

Tellusは今後、「マーケット」をリリースする予定だ。マーケットとは、Tellusのユーザーが保有する衛星・地上データや、開発したアルゴリズム、アプリケーションを無料、有料でやり取りできるサービスのこと。データやアルゴリズム、アプリケーションを、Tellusが一方的に提供するだけでなくユーザーが持ち寄ることで、衛星データ利用から新規ビジネスを創出するためのエコシステムの拡大を図る狙いだ。

「衛星データ」だからと身構える必要はない。スマホで使われているGPS(全地球測位システム)を、いちいち「衛星」からのサービスだと意識して使っている人はいないだろう。

Tellusの登場によって、衛星データが身近に利用できるようになり、扱う上でのトータルコストは大きく下がった。これは、小さいリスクでさまざまな仮説を試行できるようになったということだ。

インターネットも当初の目的はビジネス利用ではなかった。まず、新しいテクノロジーに興味を持った人たちが少しずつ試行することで草の根的に発達してきた。その延長線上で、今やインターネットは当たり前にビジネスで使われている。

Tellusが誕生した今、衛星データに触れるのに大義名分はいらない。さまざまな業種の人々が、衛星データにまずは触れ、試行することからビジネス利用の道は広がる。それがやがてユースケースとなり、社会の形を塗り替えていく。私たちはTellusという、自らの手で未来社会地図を描くためのツールを手にしたのだ。

この続きは、11月29日のテクノロジー・カンファレンスで。

MITテクノロジーレビューがこの秋、お届けするテクノロジー・カンファレンス「Future of Society Conference 2019—宇宙ビジネスの時代—」に、さくらインターネット xData ALLIANCE Project シニアプロデューサーの山崎秀人氏の登壇が決定。衛星データプラットフォーム「Tellus」によって実際にどのようなビジネスが創出されていくのか? MITテクノロジーレビュー編集部とディスカッションします。イベントの詳細はこちら

(提供:Tellus

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MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]日本版 編集部
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