シェイクスピア『ヘンリー8世』の真の作者は誰か?機械学習で解明
シェイクスピアの歴史劇である「ヘンリー8世」の執筆には他の作者も関わっていたらしいということは、長い間指摘されてきた。機械学習アルゴリズムを利用して文体を解析することで、ヘンリー8世の脚本のどの部分を誰が書いたかが明らかになった。 by Emerging Technology from the arXiv2020.03.19
ウィリアム・シェイクスピアは、「国王一座(King’s Men)」と呼ばれる劇団の座付き劇作家として生涯の大部分を過ごした。国王一座は、ロンドンを流れるテムズ川の岸辺でシェイクスピアの劇を上演したが、1616年にシェイクスピアがこの世を去ると、同劇団は当時最も多作で名の知れていた劇作家の1人であるジョン・フレッチャーを後継者として採用した。
フレッチャーの名声はその後衰えて行くが、1850年にジェームス・スぺディングという文芸研究家が、シェイクスピアの作品である「ヘンリー8世」の文章がフレッチャーの文体とそっくりであることに気付いた。そして、フレッチャーとシェイクスピアがこの作品を共同執筆したにちがいないと結論付けた。
その証拠として、ヘンリー8世にはシェイクスピアとフレッチャーが持つ言語的特異性が入り混じって現れている。たとえば、フレッチャーはしばしばyouという単語の代わりにyeを用い、themの代わりに'emを用いた。また、標準的な五歩格の行にsir、still、nextなどの単語を加えて第6音節を作り出す傾向があった。
こうした特徴から、スぺディングをはじめとする一部の研究者は、フレッチャーがヘンリー8世の脚本執筆に関わっていたのだろうと考えた。だが、正確にどのように作業が分担されていたのかについては意見が大きく分かれている。また、別のイギリス人劇作家のフィリップ・マッシンジャーがシェイクスピアの共著者だったという意見もある。
そのため、多くの文学者や歴史家が、ヘンリー8世のどの部分をだれが執筆したのかをはっきりさせようと、研究を続けてきた。
プラハにあるチェコ科学アカデミーのペトル・プレハチ博士は、機械学習を使ってこの問題に取り組み、ほぼ行単位で、脚本のどの部分を誰が書いたか判別することに成功したという。「研究結果は、脚本の中でウィリアム・シェイクスピアが書いた部分とジョ …
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