スペースXの打ち上げ再開に暗雲
イーロン・マスクの火星行き計画に影響も
9月の大爆発以来、スペースXは打ち上げ再開の目処が立たず、ヨーロッパのライバルに案件をひとつ持って行かれた。 by Jamie Condliffe2016.12.09
9月1日、スペースXファルコン9ロケットはフロリダの発射場で大規模の爆発事故を起こした。その後、現在に至るまで再発射に遅れや障害があり、顧客にも影響を与え始めている。
スペースXは1月に起きた「異常」の原因をまだ特定できていないが、テストでは、フロリダの発射場で、 酸素と炭素複合材製ボトルに入った液体ヘリウムが、想定外の形で反応した可能性が示されており、燃料系統の問題だと考えられいる。
原因の確認が遅れているが、イーロン・マスクが設立した宇宙開発企業スペースXの望みは、12月中のロケット再発射だ。そして昨日、1月初めに次のロケットを発射することにした。
しかし、 ワイアードが伝えているとおり、1月の発射は希望に過ぎない。米国連邦航空局(FAA)によると、スペースXは、どのようなロケットでも発射台を離れる前に新しい許可を得るべきであり、 爆発の調査が完了し、FAAが結果に満足するまで、許可は得られない。
さらに致命的な出来事がある。イギリスの通信事業者インマルサットの発表によれば、同社の次の衛星の打ち上げにはスペースXを使わず、ライバルであるアライアンスペースを使うことにしたのだ。インマルサットは、スペースXによる打ち上げの遅れが、打ち上げ業者変更の理由だという。
インマルサットは、2017年前半にスペースXで別の衛星を打ち上げる計画だ。しかしイーロン・マスクにはまだ悪いニュースがある。フォーチュン誌によれば、スペースXは100億ドル分以上の発射待ち案件が残っているのだ。
もしこれ以上顧客が去って売上高を失いたくなければ、スペースXは問題を速やかに解決する必要がある。悠長なことはいっていられないが、マスクの 火星へのチケットはそこにかかっている。
(関連記事:Wired, Wall Street Journal, Fortune, “人類を火星に移住させるイーロン・マスクの超構想,” “Reusable Rockets”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。