IBMがAI討論システムを改良、BERT採用で実用化へ一歩近づく
IBMは、「論証マイニング」と呼ばれる手法を用いて、多くの情報源を検索し、あらゆる根拠を使って議論を組み立てられる人工知能(AI)システムを構築している。議論を通じて人々とコミュニケーションを取れるバーチャル・アシスタントは、人々がより良い意思決定を下すのに大いに役立つだろう。 by Douglas Heaven2020.01.28
コンピューターは人間が月へ行って帰ってくるまでのガイドを務めたが、現在私たちが直面している最大の決断を下すのには役に立たない。ドナルド・トランプ大統領は弾劾されるべきだろうか。英国は欧州連合(EU)を離れるべきか。オーストラリアは化石燃料の輸出を停止すべきか。このような質問にはイエスかノーの答えはない。しかし、答えがあるものだとつい考えたくなってしまう。
人々は長所と短所を比較検討することによって何かを決定する。人工知能(AI)は、増え続けるデータの山をふるいにかけることで、人々の決定を支援できる可能性がある。しかし、AIが本当に役に立つためには、人間のように論理的に考える必要がある。「人々は説得力のある言語と、あらゆる種類の背景知識を利用します。これをAIでモデル化することは非常に困難です」と、英国ダンディー大学論証技術センターのジャッキー・ヴィッサー講師は言う。「人々がAIについて考え始めて以来、この課題は絶対達成できない理想の1つとされてきました」。
機械が論理的に考えるのを助けるために核となる手法は「論証マイニング」として知られている。論証マイニングでは、文書を分析し、特定の主張に対する賛否の根拠となる重要な文を抽出するソフトウェアを構築し、抽出した文を論証へと集約する。こうしたツールは、より良い意思決定を支援するだけでなく、フェイクニュースの検出にも利用できる。つまり、怪しい主張を弱体化させて事実に基づく主張を支持したり、オンライン検索結果をフィルタリングしてドキュメント全体ではなく適切なステートメントを返したりする。
論証マイニングに関する他のグループの研究は、法的な文書や学生のエッセイなど特定のタイプのテキストに焦点を当てている。そうしたテキストが元々、多くの組織だった議論を含む傾向があるためだ。論証マイニングはたとえば、ある訴訟のさまざまな文書にまたがるすべてのエビデンスの要約が必要な場合に役立つ。しかし、最終的な目標は、できるだけ多くの情報源を検索し、見つかったあらゆる根拠を使って議論を組み立てられるシステムを構築することだ。
IBMはその実現に向けて大きな一歩を踏み出した。同社の「プロジェクト・ディベーター(Project Debater)」チームは、ここ数年にわたり、議論を組み立てられるAIを開発してきた。昨年、同社は人間のディベーターの世界チャンピオンとのライブ討論という形で、研究中のテクノロジーを実演した。これは同社のAIシステムである「ワトソン」が、クイズ番組「ジェパディ!(Jeopardy! )」で人間と対決したのに相当する。こうした妙技は楽しいだけでなく、概念を実証してくれる。IBMは現在、おもちゃを本物の有用なツールへと発展させつつある。
ライブ討論で使用されたプロジェクト・ディベーターには、何億本もの新しい記事を検索する機能など、最新のシステムの種が含まれていた。しかし、その後数カ月で、チームは使用するニューラル・ネットワークを …
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