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スマホアプリだけではない、
接触者追跡を成功させる
5つのポイント
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Five things we need to do to make contact tracing really work

スマホアプリだけではない、
接触者追跡を成功させる
5つのポイント

新型コロナウイルスのパンデミックを封じ込めるには、検査・追跡・隔離の3つが要となる。感染症との戦いで効果が証明されてきた接触者の追跡は重要な要素だ。 by Patrick Howell O'Neill2020.05.26

新型コロナウイルス のパンデミック(世界的な流行)は、中国系米国人からビル・ゲイツ、5Gネットワークにいたるまで、あらゆるものを攻撃・非難する陰謀論者、怪しげな治療法を売り捌くタレント、あるいは大規模な詐欺師グループといった人たちの温床になっている。この異様な戦いの最前線に置かれているのが、接触者追跡だ。

接触者追跡とは、公衆衛生従事者が感染症の原因となる病原体保有者を特定し、曝露した可能性のある人を明らかにするために用いる方法だ。リスクのある人を隔離することで、感染症の蔓延を食い止める。麻疹、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、エボラなどの感染症のアウトブレイクとの戦いにこれまで使われてきた実績ある調査手法だ。世界中の国々がすでに新型コロナウイルス対策としてこの方法を使って大きな成功を収めており、現在、多くの米国の州が独自の接触者追跡チームを編成し始めている。同時に、アップルやグーグルなどの強大テクノロジー企業は、追跡方法を拡張・自動化し、ウイルスに曝露した可能性のある人に通知するシステムを構築している。しかし、検査、社会的距離戦略(ソーシャル・ディスタンス)、隔離などのように、接触者追跡も今や政治的な論戦に巻き込まれている。

「まったくバカげていますね」。元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニはフォックス・ニュースの司会者であるローラ・イングラハムにこう話した。新型コロナウイルスに感染した人の追跡のために「軍隊」を組織するというニューヨークの計画について尋ねられたときのことだ。「それなら、我々はがん、心臓病、肥満といったすべての人を追跡するべきです」と彼は笑った。「要するに、新型コロナウイルス感染症よりも多くの原因で人々は亡くなるのですから、それらすべてを追跡しなければならないということです」。

「そうです」。イングラハムは呆れた表情で鼻を鳴らした。「追跡のための軍隊です」。

実際のところ、あらゆる医療専門家、米国疾病予防管理センター(CDC)や世界保健機関(WHO)といった保健機関は、接触者追跡は世界を正常化するための3つの重要な計画、すなわち、検査、追跡、隔離の1つだと強調している。

「接触者追跡の重要性は、いくら言っても言い尽くせません」。疫病を専門とする元CDC調査官でスタンフォード大学ヘルス・コミュニケーション・イニシアチブのシーマ・ヤスミン所長は言う。「接触者追跡は、重症急性呼吸器症候群(SARS)からエボラ出血熱、それ以降のすべての主なエピデミック(局地的な流行)調査の基礎となっています」。

感染者を見つけなければならないので検査は絶対的な最優先事項だが、一方で、感染症が制御不能に蔓延するのを防ぐためには接触者追跡が不可欠だ。感染リスクのある人を特定し、ウイルスをさらに広める前に隔離する。

「新型コロナウイルスの典型的な潜伏期間は約1週間で、これはかなり長く、新型コロナウイルスの弱点といえるでしょう」。マイクロソフトのコンピュータ科学者であるジョン・ラングフォード博士は話す。フォード博士は接触者追跡の取り組みについてワシントン州と協力してきた人物だ。「それより短い時間で追跡して隔離できれば、新型コロナウイルスの拡散を止められます」。

それにしても、ジュリアーニ元市長の発言は、痛々しいほど馬鹿げている。たとえば、肥満は感染症ではない。とはいえ、パンデミックにおける接触者追跡の取り組みは歴史的に効果が分かっているものの、非常に現実的な課題に直面しているのも事実だ。追跡チームによって人手で接触者を追跡するにしても、自動的にスマホにアラートを送るにしても、今回のパンデミック対応に必要な規模で追跡に取り組んだことは、いまだかつてない。追跡に関するあらゆる問題や懸念は悪化しており、取り組みが成功するには問題に対処する必要がある。

米国が接触者追跡に成功するために必要なのは次の5つだ。

タスク1:10万人の追跡者を雇う

米国は通常の生活に戻り始めているが、ワクチンまたは効果的な治療法がない場合、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐ主な方法は人手による追跡になる。訓練を受けた医療従事者が、検査で陽性と診断された感染者と連絡を取り、その行動や接触者に関するデータを収集する。感染者は直近で100人と接触している可能性がある。つまり、電話または対面で、ウイルスに曝露したリスクがある100人を追跡しなければならない。追跡者の作業は、データと科学に基づき検査と隔離を要求するという、労働集約的なものになる。

「大規模な事業になるでしょう」。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は4月末の記者会見で述べた。

ニューヨーク州、特にニューヨーク市は、現在、世界で最も大きな被害を受けている地域であり、人手による追跡体制を築く難しさを物語っている。人口が2100万人を超え、1万6100人以上が亡くなった都心部で活動している追跡担当者は1000人未満だ(1100万人都市の中国・武漢は9000人)。

米国の保健部門は2008年の金融危機以来、慢性的な資金不足で5万5000人以上の職員を削減している。人手不足によって国民の生命が危険に晒されると繰り返し警告されているにもかかわらずだ。実際、州・準州保健担当職員連盟(The Association of State and Territorial Health Officials)によると、現在、接触者を追跡する人は全米で2200人しかいないという。

状況は、刻々と変わりつつある。ニューヨーク州は地域レベルでニュージャージー州とコネチカット州と協力しており、数千人もの医学生の手を活用したい考えだ。マサチューセッツ州は、追跡担当者を1000人雇うために4400万ドルを予算化している。全米で最初に接触者追跡チームの組織化を進めた地方自治体の1つ、サンフランシスコ市は、人口88万人の都市を監視するため最大150人の追跡者を増やす用意がある。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、州全体でさらに1万人の追加を約束している。しかし …

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