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New Single-Pixel Camera Can See Around Corners

視野外を撮影できるカメラを中国の研究者が開発

中国の科学者が、カメラの前にないモノを撮影できるカメラを開発した。 by Emerging Technology from the arXiv2017.01.09

ここ数年間で、シングル・ピクセル・カメラ(1画素カメラ)は撮像分野に大変革をもたらしている。この反直感的デバイスは、レンズを使わず、液晶パネルなどでランダムにピンホールを作り、そこから入ってきた光をひとつの撮像素子で光を検出して高解像度画像を撮影する。レンズに起因する歪みがないので、画像全体がピントの合った状態になる。物理学者はシングル・ピクセル・カメラを使って動画を作ったり3D画像を制作したりしている。

ここでひとつ興味深い疑問が浮かんでくる。シングル・ピクセル・カメラは他に何ができるだろうか?

西安交通大学のバイ・ビン研究員のチームの成果より、この疑問の答えがひとつ見つかった。研究チームは見えないところまで撮影できるシングル・ピクセル・カメラを構築したのだ。「被写体」が直接視野内になくても撮影できる新装置だ。

手法としては、他のシングル・ピクセル・カメラに似ている。撮像素子はランダムに光を検出し、得られた光の強度を記録する処理を何千回も繰り返す。ランダム化により画像の生成が難しくなりそうだが、実際は逆だ。撮像素子が光を検出するたびにピンホールの位置をランダムに変えることで、光の強度はその都度変化する。このとき強度の違いはランダムではなく、撮像素子の前にある光景と相関しているはずだ。そこでデータを分析し、相関性を見つけることで、撮像素子がひとつしかなくても画像を生成できるのだ。さらに、収集するデータが多いほど、画像の質は高くなる。つまり、光の強度を何度も記録することで、高解像度の写真をひとつの撮像素子で作成できるわけだ。

同じ方法を使って、研究チームはカメラの視野外を撮影できた。物体から壁に散乱した光を利用して画像を生成したのだ。撮像素子は散乱光を記録するが、被写体はカメラから直接見えないところにある。

実験内容はシンプルだ。最初に、研究チームはおもちゃの飛行機にプロジェクターの光を照らす。プロジェクターからは撮影ごとに変化する四角いパターンがランダムに投影される。

飛行機は光を拡散させる白い撮影用の壁の横に置かれており、壁は飛行機が「視野」に入っていないカメラに向けて光を拡散する。撮像素子は壁から反射される光の強度を記録する。研究チームは撮影を約5万回繰り返し、最後にデータ分析アルゴリズムにより、全データを処理し、下にあるような飛行機の画像を作成した。

見事な成果だ。研究チームは「実験結果から、カメラが直接被写体を捉えていなくても、シングル・ピクセル・カメラなら拡散光により視界の外側にある物体を画像化できることがわかった」と記している。

画像には、飛行機がしっかり写っている。研究チームは、たとえばアルゴリズムの最適化や投影する光のランダムなドット・パターンを小さくするなど、もっと改良できるとしている。「ドットのパターンを小さくすれば、画像の解像度を高くできる」という。

5万回の撮影をどのくらいの時間で処理できるのかも意義のある疑問だ。画像全体のシャッタースピードがわかれば、「被写体」が動く場合でも撮影できるかがわかる。

中国の研究チームはこの装置の用途を特に提案してはいないが、どんな用途で使われるかは簡単に想像できる。シングル・ピクセル・カメラはサイズも小さく、簡単に作れるし、製造費もかからない。

さまざまな形で、シングル・ピクセル・カメラは近い将来、カメラの用途や撮影手法に大きな影響を与えるだろう。

参照:arxiv.org/abs/1612.07120: コンピューター・ゴースト画像処理でシングル・ピクセル・センサーによる視野外の撮影

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