テクノロジーはなぜ、人種差別を固定化する手段になり得るのか
黒人たちはこれまで、自分たちを不等に扱うためにテクノロジーが使われるのを何度も見てきた。私たちは、人種差別や白人至上主義を固定化するようなツールを今後も設計・展開し続けるのかどうか考え直す時期に来ている。 by Charlton McIlwain2020.06.09
米国は今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と警察の暴力という2つのパンデミックの重みで崩壊寸前の状況にある。
いずれも身体的・精神的な暴力をもたらし、黒や褐色の肌の人々を不等に死に至らしめ、弱体化させる。そして両者とも、接触者追跡や顔認識、ソーシャルメディアなど、私たちが設計し、転用して展開しているテクノロジーによって勢いを得ている。
人間はしばしば、問題を解決するためにテクノロジーに頼る。だが、社会が有色人種を「問題」と定義し、枠に当てはめ、表現した場合、そうしたソリューションはしばしば有用ではなく有害となる。私たちはこれまで、肌の色に基づいて容疑者を標的とする顔認識技術を設計し、ラテン系の人々を不等に不法移民と決めつける自動リスク分析システムを訓練してきた。黒人を不等にリスクと見なし、家の購入や融資、仕事探しを妨げるようなクレジット・スコアリング・アルゴリズムを考案してきた。
つまり、私たちが今、向き合わなければならない問題は、人種差別や白人至上主義の利益に資するツールを、今後も設計・展開し続けるのかということだ。
もちろん、これは、これまでにも指摘されてきた問題だ。
「非」公民権
1960年、米民主党の指導部は問題に直面していた。自党の大統領候補ジョン・F・ケネディが黒人や他の少数派からの支持を減らしつつあり、どうすれば立て直せるのかという問題だった。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の進取的な政治学者イシエル・デ・ソラ・プール教授が、民主党に解決策を提示した。プール教授はそれまでの大統領選から有権者のデータを集め、それを新型のデジタル処理装置に入力した。そして投票行動をモデル化するアルゴリズムを開発し、一番好ましい結果につながる政治的立場を予測し、それに従って行動するようにケネディ陣営に助言した。プール教授は新会社サイマルマティクス・コーポレーション(Simulmatics Corporation)を立ち上げて自身の計画を実行した。プール教授は成功を収め、ケネディは当選し、その成果はこの予測モデリングの新しい手法の力を示すものとなった。
人種間の対立は1960年代を通じて高まった。そして1967年の長い、暑い夏がやってきた。バーミンガムやアラバマ、ロチェスター、ニューヨークからミネソタ州のミネ …
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