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専門家も絶賛する新型コロナ情報サイト、17歳の開発者に聞く
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A teenager's guide to building the world’s best pandemic and protest trackers

専門家も絶賛する新型コロナ情報サイト、17歳の開発者に聞く

17歳の高校生が、米国で訪問者数が最も多く、専門家の評価も高い新型コロナウイルス感染症追跡サイトを制作し、話題になっている。サイト立ち上げの経緯や今回の経験から得たことを聞いた。 by Tanya Basu2020.06.15

新型コロナウイルスのパンデミックと、5月25日のジョージ・フロイド殺害事件によって引き起こされた抗議デモが2020年を決定づける出来事であるのは、これまでのところ間違いない。そしてどちらも、ある若者がネット上で大きな役割を果たしている。アヴィ・シフマンという名の17歳の若者は、卓越した質と量を誇る新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例トラッカーの制作者であり、ごく最近では抗議デモ追跡サイトの制作者でもある。

シフマンのサイトは大変評判が良い。情報が即座に更新され、見せ方も簡潔だからだ。調査が非常に綿密であるため、実際のところ、疫学者も新型コロナウイルスの拡大を予測するのにシフマンのトラッカーを利用しているほどだ。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウシ所長も10代の若者が作ったこのサイトを「必要不可欠」として賞賛している。シフマンは優れたインターネット・サイトに贈られる「ウェビー賞(Webby Awards)」のパーソン・オブ・ザ・イヤー賞も受賞した。

https://www.facebook.com/thewebbyawards/videos/dr-fauci-presents-webby-person-of-the-year-to-17-year-old-avi-schiffmann-for-his/645354229349346/

 

この名誉の上にあぐらをかくこともできたはずのシフマンだが、ジョージ・フロイド殺害事件に刺激され、別のプロジェクトを立ち上げた。新しいサイトはシンプルな作りで、機能も「近くのデモ開催地を探す」という主目的だけに絞られている。

シフマンはこれらのプロジェクトをどうやって成し遂げたのだろうか? MITテクノロジーレビューはシフマンにインタビューし、これらのプロジェクトにどうやって取り組むようになったのか、同じようなことをやりたい人たちにどうアドバイスするか、語ってもらった。

※以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にするため、要約・編集されている。

小規模プロジェクトから学ぼう

昨年の秋、自分が通う高校のためにWebサイトを作成しました。スポーツ競技の得点を追跡するためのサイトです。州のサイトが提供していた統計をWebスクレイピングして作りましたが、元のサイトはひどいものでした。10億年前に作られたのかというような、読みにくくて、デザインも最悪のサイトだったのです。そこで僕は自分の高校のスポーツサイトを作り直しました。誤ってサーバーを2回ダウンさせましたが、どちらの得点が高いか見やすいようコーディングしました。自分たちの得点の方が高い場合は、「勝ち(Win)」のWが緑で示され、相手チームの得点の方が高い場合は、「負け(Loss)」のLが赤で示されます。そのときに作ったWebサイトが、新型コロナウイルス感染症の症例トラッカー「ncov2019」の元になりました。

2020年の抗議デモ用サイトもこれにかなり似ています。抗議デモが起きているのを見て、話をするだけで何もしていない人が多いことにも気づきました。やってもせいぜいインスタグラムに何か投稿するくらいでした。そこで、自分のプラットフォームを使用して実際にもっと何かすべきだと考え、役に立ちたいと思ってWebサイトを始めました。

自らの経験から問題を見つけよう

「ncov2019」を始めたのは、12月下旬から1月上旬にかけてです。新型コロナウイルス関係の数字に興味があったのですが、最新の情報を得たいと思ったら中国政府の情報に頼らなければいけない状態でした。それに僕は中国語はできません。他の手段はニュース記事を読むことでしたが、情報を動的に更新しているところはありませんでした。見栄えの良いダッシュボード・トラッカーを探したのですが、当時は見つかりませんでした。

助けを求めよう

たくさんの人に情報リサーチを手伝ってもらっています。いくつかのコーディングのサイトに質問を投稿すると、36時間以内に助言が得られました。手作業で集めなければならない情報はたくさんあります。年齢 …

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