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UAE初の火星探査機、種子島宇宙センターから打ち上げに成功
AP
The United Arab Emirates just launched its first ever mission to Mars

UAE初の火星探査機、種子島宇宙センターから打ち上げに成功

アラブ首長国連邦(UAE)の 火星探査機「ホープ(Hope)」を搭載した「H-IIAロケット42号機」が打ち上げに成功した。 by Neel V. Patel2020.07.21

日本標準時(JST)2020年7月20日午前6時58分、「H-IIAロケット42号機」により、アラブ首長国連邦(UAE)の 火星探査機「ホープ(Hope)」が鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられた。同探査機が無事に火星に到達すれば、アラブ首長国連邦は火星に到達した数少ない国々の仲間入りをすることになる。

ホープは、火星周回軌道から火星の大気や天候を調査する宇宙船だ。火星の下層大気については知られていないことがまだ多い。火星探査車はあまり下層大気を調査することはできず、以前の火星周回宇宙船も下層で何が起こっているかが分かるように作られていなかった。ホープは多周波帯用カメラを備え、可視波長から紫外線波長まで、2つの分光計(1つは紫外線、もう一つは紫外線)によって火星大気を調査する。それらのデータをまとめて、下層大気の温度、化学成分、含水量、浮遊塵埃量、宇宙に放出される水素や酸素の量を評価することになっている。

特に関心が持たれているのが、火星で発生する砂塵嵐についてホープがもたらすであろう情報だ。砂塵嵐は数週間続く大規模なものになることが多く、惑星全体を覆い、地表にある全てのものとの通信が途絶える(2018年に米国航空宇宙局(NASA)の探査車「オポチュニティ(Opportunity)との通信がついに途絶えたように)。火星で将来人間がどんな活動をするにせよ、砂塵嵐に備えて計画しなければならないだろうし、そのためには、どのように砂塵嵐が起こるのか、どのようにそれを予期できるかをもっと知る必要がある。

ホープはUAEのミッションだが、全体的には国際的な冒険的事業と言う方が適切だ。ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターが管理する2億ドルの宇宙船は、コロラド大学ボルダー校、アリゾナ州立大学、カリフォルニア大学バークレー校との協力で作られた。UAEは日本とも協力し、宇宙船を安全に打ち上げるため、日本のロケットに載せた。また、ミッションについてのデータは、世界の200以上の研究所が無料で利用できるようになる。

ホープは2021年2月に火星に到着し、最低2年間、軌道を回る予定になっている。ミッションはさらに2年延長されて、2025年まで続く可能性もある。

ただし、UAEの火星探査機はこの夏に火星へ向かう数機の内の1つにすぎない。打ち上げに絶好の機会(火星と地球が最も近づく時)は、2年に一度しか来ない。中国の「 天問1号( Tianwen-1)」の探査車は7月20日から25日に、以前マーズ(Mars)2020探査車と呼ばれていた米航空宇宙局(NASA)の探査車「パーサビアランス(Perseverance)」は7月30日に打ち上げられる予定となっている。

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ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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