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ロシアの関与許した「漏洩合戦」、4年前の反省を生かせるか?
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Why security experts are braced for the next election hack-and-leak

ロシアの関与許した「漏洩合戦」、4年前の反省を生かせるか?

2016年の米大統領選では漏洩情報がタイミングよく公開され、選挙結果に大きな影響を与えた。情報の出所や公開の意図を見極める必要がある。 by Patrick Howell O'Neill2020.10.20

ニューヨーク・タイムズ紙がドナルド・トランプ大統領の納税記録に関する大スクープを報じたとき、大勢のサイバーセキュリティー専門家の脳裏に、4年前のトラウマがよみがえった。

2016年、大統領選挙投票日のほんの数週間前、女性にわいせつな行為をするための策略を自慢げに話すトランプ大統領(当時は候補者)の発言を収めた録音が漏洩した。米国の3大テレビ・ネットワークの1つであるNBCのエンタテインメント・ニュース番組「アクセス・ハリウッド(Access Hollywood)」の収録セットで録音されたのだった。トランプ候補者を大統領選から撤退させる恐れがあるほどのニュースだった。

しかし、それから1時間も経たないうちに、ウィキリークス(Wikileaks)がヒラリー・クリントン陣営のジョン・ポデスタ選対本部長のアカウントから漏洩した電子メールを公開し始めた。ポデスタ本部長の電子メール・アカウントは、ロシアの諜報機関にハッキングされていた。

その目的は、アクセス・ハリウッドの録音テープから注目をそらすことだった。そして、この計略は狙い通りに成功した。

ポデスタ本部長の電子メールの数万ページにも及ぶ文書の中で、ニュースとして価値がある内容はわずかしかなかったが、ハッキングによって漏洩された電子メールはトランプ大統領の問題発言をかすませてしまった。その一因は、メディアやテック企業、そして政府機関が、ロシアによって綿密に計画された工作活動への対策を整えていなかったことにもある。いずれにせよ、何万ページもの大量の文書が流出すれば、ニュースがその話題で持ち切りになるのも無理はないことだった。慣れ親しんだ情報戦に加わった新しい展開に対して、ジャーナリストとシリコンバレーがいかに無防備であるかが明らかになった。

2016年以降、「ハック・アンド・リーク作戦(hack-and-leak operation)」は、想像以上に頻繁に実施されるようになっており、漏洩はサウジアラビア、英国、フランス、アラブ首長国連邦で繰り返し発覚している。その結果はさまざまだが、全体的な傾向は明白だ。ハック・アンド・リークは、政治や選挙結果に影響を与えようと目論む諸外国の主な手段となっているのだ。

シンクタンクの大西洋評議会(Atlantic Council )のサイバー国政術研究所(Cyber Statecraft Initiative)に所属するジェームス・シャイアズ研究員は、 「この種の情報工作は増加傾向にあります。その理由は、まず第一に、簡単に実行できるからです」と話す。「また、正体不明の人物やハクティビストが漏洩していると主張することで、関与を否認できます。しかも、この手法はゲームのルールの範囲内にあるのです …

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