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人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
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Don't worry, the earth is doomed

人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク

異常気象や気候変動をはじめとして、生物化学兵器、未発見の病原体によるパンデミック、食糧危機、核戦争、民主主義の崩壊など、人類は常に破滅の危機に直面している。短期的なものから、長期的、最終的な運命まで、破滅の要因となり得る15の壊滅的リスクを紹介する。 by Tate Ryan-Mosley2020.11.10

壊滅的リスクとは、人間の暮らしを、まさに壊滅的な規模で脅かす出来事のことだ。そのほとんどは互いに結びついている。つまり、ひとつの出来事、例えば核爆発が、その他の出来事、例えば水や食料の危機、経済不況、世界大戦などの引き金となる可能性が高い。物理的、社会的、政治的なシステムは複雑に相互依存しており、それによって人間は脆弱になった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はこのことを浮き彫りにした。

ここで、あえて言うなら、こういったリスクの中には本当の意味で存在に関わる、人類の終焉を告げるようなものはあまりないということだ。さらに、壊滅的リスクのほとんどは制御されている。制御されていないものは、緩和したり準備したりすることで対応しなければならない。そうでなければ、受け入れるしかない。

この記事で挙げるリスクの評価は、世界経済フォーラム、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)、シカゴ保険数理協会(Chicago Actuarial Association)、グローバルチャレンジ財団(Global Challenges Foundation)、レディング大学のベサン・ハリス研究員、米国航空宇宙局(NASA)のデビット・モリソン博士によるものであり、『Human Extinction: A Short History(人類絶滅:小史)』(未邦訳)の筆者である倫理・先端技術研究所(Institute for Ethics and Emerging Technologies)のフィル・トレスの助言を受けている。

短期的なリスク

1. 自律兵器

autonomous weapon

【今後10年以内の高リスク】

完全な自律兵器はまだ存在しないが、ドローン技術と人工知能(AI)の進歩で、実現する可能性が高くなっている。ならず者の存在や無責任に使用されることで、かつてないほどの規模とスピードの集団暴力につながるかもしれない。

2. サイバー攻撃と情報インフラの崩壊

【今後10年以内の高リスク】

輸送システムや中央銀行のハッキングは、大混乱を引き起こし公共の安全を脅かすだろう。それを阻止できるかどうかは、サイバーセキュリティに関する人々への教育にかかっている。

3. データ詐欺や窃盗

【今後10年以内の高リスク】

社会保障番号のようなデータの大規模窃盗が、元に戻せないほどの損害を政治社会システムに生じさせる可能性がある。

長期的リスク

4. 異常気象

【すでに進行中、今後数年で悪化する可能性が高い】

洪水、暴風雨、山火事、そして気温の上昇が、世界中の数億人の人々を脅かしている。2000万人以上の人々がすでに毎年、異常気象のせいで故郷を後にすることを余儀なくされている。その脅威は個人の安全の範囲を超えており、一般的な経済リスクと保険のような制度を機能不全にする可能性をもたらす。

ice cap melt

5. 壊滅的な気候変動

【高排出モデルのもとで、地表の気温は今世紀末までに2.6℃から4.8℃上昇すると予測されている】

人間由来の破壊活動が変化を後戻り不可能にする限界点を超えると、壊滅的な気候変動が起きる。人間の活動は、自然の力に比べて170倍の速度で気候を変化させており、異常気象をもたらし、海水温を上昇させ、氷を融かし、海面を上昇させる。

6. 生物化学戦争

【今後約100年以内で最大1%のリスク】

生物化学兵器は、より安く、より容易に作れるようになり、命をますます危険に晒している。国家とテロ集団のほとんどは、生物化学兵器を入手できる可能性が高い。リスクのレベルはまちまちだが、例としては、有毒な化学物質が航空機から散布されたり、水道システムに混入されたりすることなどがある。

7. 人工知能

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【今後100年以内で最大10%のリスク】

人工知能(AI)に関連した壊滅的なリスクは、コンピューターが人間社会を乗っ取ることの懸念よりも、乱用や粗悪な開発によるところが大きい。フェイクニュースを拡散したり「エコーチェンバー」をつくり出すアルゴリズムが、信頼のおける情報源を損ない、すでに不安定になっている民主主義を一層不安定にする可能性がある。

8. 水、または食料危機

【地表の気温が産業化前の水準より1.5℃から4℃上昇すると、遅くとも2200年までに起こる可能性が高い】

気温が上昇すると、おそらく干ばつと生態系の崩壊によって引き起こされた水不足に直面する。食糧危機もこれにかかわってくることとなるが、土壌の質、世界のサプライチェーン、使用可能な土地も要因となる。

9. 生態系の崩壊

【気温が1.5℃から4℃上昇すると、遅くとも2200年までに起こる可能性が高い】

自然の生態系は、人類に空気と水、食料、住まい、そしてエネルギーをもたらしてくれる。現在、人類は天然資源を使いすぎ、破壊しており、世界の生態系を次々に短期間のうちに崩壊させる恐れがある。

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10. パンデミックと抗微生物薬耐性

【1918年のインフルエンザのようなパンデミックは約420年おきに起こる】

新型コロナウイルス感染症は、この100年で最大のパンデミックだ。都市化が進み、人口密度が高まり、国を越えた移動が増えたことで、どんな新たな感染症でも大きなアウトブレイクとなるリスクが高まっている。同時に、微生物に対して薬が効かなくなる「抗微生物薬耐性」が高まっており、感染症がますます命に関わるものになっている。

11. 小惑星の衝突

【種レベルで生物を滅亡させる衝突が、7万年おきに起こると考えられている】

地球に近い小惑星で最大のものは、直径が1キロ以上あり、衝突すれば人類を滅亡させる可能性がある。比較的小さな小惑星であっても、数億人が死亡するかもしれない。しかし、小惑星の追跡技術は進歩しており、もしかしたら、いつの日か衝突を避けられるようになるかもしれない。

最終的な運命

supervolcano

12. 火山の大噴火

【今後7万年で約1%の確率】

火山の大噴火は、生物の生息する場所を破壊し、太陽光を遮り、大気環境を悪化させ、おそらくは地球寒冷化にさえつながる。現在、米国のイエローストーン国立公園を含めて高リスクと評価されている地域が複数ある。

13. 核戦争

【今世紀末までに1%のリスク】

世界の核保有国には、1万3000発以上の核弾頭がある。核の冬になると、火炎による煤と塵が太陽光を遮り、地球寒冷化と生物の大量絶滅につながる。

 

column

14. 民主主義の崩壊、または機能停止

【拡大中の懸念】

世界の民主主義化は、1980年代に始まって急速に加速した。しかし現在、ナショナリズムと誤情報、プロパガンダ、機関の独立性や公平な選挙が損なわれていることで、多くの民主主義国が専制政治への瀬戸際に押しやられている。あるいは、押し出されている。

15. 太陽が地球を飲み込む

【必ず起こる】

約8億年後、太陽が膨張して、人間が地球に住めなくなる。約65億年後には、太陽は炎の縁に地球を飲み込むほどに膨張する。

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テイト・ライアン・モズリー [Tate Ryan-Mosley]米国版 テック政策担当上級記者
新しいテクノロジーが政治機構、人権、世界の民主主義国家の健全性に与える影響について取材するほか、ポッドキャストやデータ・ジャーナリズムのプロジェクトにも多く参加している。記者になる以前は、MITテクノロジーレビューの研究員としてニュース・ルームで特別調査プロジェクトを担当した。 前職は大企業の新興技術戦略に関するコンサルタント。2012年には、ケロッグ国際問題研究所のフェローとして、紛争と戦後復興を専門に研究していた。
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