KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
主張:新型コロナワクチンの緊急使用許可、慎重な判断を
Mario Tama/Getty Images
生物工学/医療 無料会員限定
Covid-19 vaccines shouldn’t get emergency-use authorization

主張:新型コロナワクチンの緊急使用許可、慎重な判断を

新型コロナワクチンの開発が急速に進んでおり、治験で高い有効性を実証した企業もすでに現れている。誰もが一刻も早くワクチン接種を受けられるようにするのが望ましいことだが、「緊急使用許可」による拙速な提供はワクチンに対する信頼を損なう恐れがある。 by Clint Hermes2020.11.24

私は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを本当に欲している。多くの米国人と同様、新型コロナの症状が出たり、亡くなったりした家族や隣人が私にもいる。私の姉妹は新型コロナ病棟に配属されている看護師だが、安全な環境で仕事をしてほしいと思っている。私は医療専門の弁護士として、新型コロナワクチンに「緊急使用許可(EUA)」を出すかどうかを最終的に決定する米国食品医薬品局(FDA)の科学者を最大限に信頼している。だが、緊急使用許可を出した場合に起こるかもしれない事態を深く憂慮してもいる。

新型コロナワクチンの研究は驚くべきペースで進んでいる。開発のいずれかの段階にあるワクチン候補は200以上あり、その中にはすでに第3相試験に入っているものもいくつかある。新型コロナウイルス感染症が世界的な公衆衛生の緊急事態になってから何カ月かしかたっていないにもかかわらず、である。しかしながらFDAがワクチンを承認するには、(通常は少なくとも6カ月間、数万人の被験者の追跡を必要とする)治験を完了させる必要があるだけではない。FDAはワクチンの製造施設を視察し、詳細な製造計画や製品の安定性データを調べ、大量の治験データを詳しく調べる必要もあるのだ。このような確認作業には、ゆうに1年かそれ以上かかる。

そのためここ数カ月間、FDAは、正式承認に通常要する情報がすべて出揃う前の初期段階において、緊急使用許可により新型コロナワクチンを配布するための基準の検討を進めている。現在第3相試験を実施している製薬メーカーのうち少なくとも数社が、緊急使用許可申請の意思を公に宣言している。ファイザーは、自社ワクチンで有望な中間結果が出たのを受け、11月下旬にも申請する予定だ(日本版注:同社は11月21日に申請した)。

FDAは緊急使用許可により、公衆衛生の緊急事態において未承認の製品の利用を許可できる。FDAはこれまで、H1N1型インフルエンザやジカ熱のような感染症を対象とした診断法や治療法については慎重に緊急使用許可を出してきた。だが、緊急使用許可によってワクチンが一般市民に使用されたことはこれまで一度もない。対象範囲が広く、健康な人に接種されるという面で、ワクチンは他の医療品とは異なる。そのため、認可基準も高く設定されている。

ワクチンについてFDAに助言をする外部専門家グループ「ワ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る