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「遺伝子組み換えサーモン」米国で販売へ、24年越しのGMO新時代
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What’s on the GMO menu: fast-growing salmon and slow-swimming tuna

「遺伝子組み換えサーモン」米国で販売へ、24年越しのGMO新時代

食用遺伝子組み換え動物としては米国で唯一承認されている「遺伝子組み換えサーモン」がもうすぐ米国の店頭に登場する。「遺伝子操作済み」と表示されたサーモンに、消費者はどんな反応を示すだろうか? by Antonio Regalado2020.12.16

遺伝子組み換えサーモンを生産する「アクアバウンティ(AquaBounty)」によると、同社のサーモンが米国初の遺伝子組み換え動物食品として販売されるという。これにより、DNAに改変を加えた生物のステーキやスペアリブの時代が幕を開けるかもしれない。

米国ではこれまで、数々の遺伝子組み換え動物の販売を承認または認可してきた。ペットショップでは、蛍光タンパク質の遺伝子が追加された光る観賞魚「グロフィッシュ(GloFish)」が販売されている。また、乳や卵の中で薬を製造するように遺伝子操作されたヤギやウサギ、ニワトリがいくつか存在する。

しかし、これまでに米国で食品として承認された遺伝子組み換え動物は1種類だけだ。その動物とは、養殖場でより速く成長するように遺伝子操作されたアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)である。規制当局からの承認を勝ち取るのに20年を要し、さらにその後、ラベル表示についての論争により販売を4年間足止めされた。アクアバウンティは、2020年12月中には、米国の流通業者に遺伝子組み換えサーモンを販売する準備が整うと見込んでいる。

アクアバウンティの市場への長い(そして高価な)道のりは、やる気を削がれるものだった。自分たちの製品が環境活動家によって「フランケンフィッシュ」だと非難されたり、「生物工学によって作られた」と目立つようにラベル付けされたりすることを、誰が望むだろうか? しかし、アクアバウンティのサーモンの承認は、遺伝子組み換え動物に取り組んでいる他の人々にとって「極めて重要な」合図になるかもしれないと、アクアバウンティの元取締役であるジャック・ボボは言う。「基本的に、動物の遺伝子組み換え生物(GMO)研究は、20年間ほぼ止まっていました」とボボは述べる。「承認されたものが出るまで、研究を実施する理由がなかったのです」。

アクアバウンティのアトランティックサーモンは、異なる種(キングサーモン)の遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物だ。ただし現在では、新しい遺伝子編集ツールを用いることで、研究者はもっと優れた方法で遺伝子の変化や幅広い機能強化をもたらすことができる。すでに、遺伝子編集を利用して、ウイルス感染に対して耐性のあるブタや、高温環境でもよく育つように斑点を黒から灰色に変えられた乳牛が実験的に開発されている。

MITテクノロジーレビューは英国企業のジーナス(Genus)についても報告している。ジーナスは、大型家畜の遺伝子を組み換える過去最大のプロジェクトを進めている。新しい遺伝子編集ツールを用いることで、家畜に影響を与える一般的な致死性ウイルスに対する免疫を持つブタを数千頭生み出している。

さらに、動物の習性も遺伝子操作の対象となっている。2019年に日本の研究者は、マグロの1つの遺伝子を変化させて遊泳速度を落とそうと試みた。マグロは、時速64キロメートル(「水の怪物」とも呼ばれる競泳選手マイケル・フェルプスの約7倍の速さ)で泳ぐことができ、養殖場の壁に衝突して死ぬことがよくある。

こうした革新的な遺伝子組み換え動物が消費者の食卓に上るまでの道のりは、依然として厳しいものだ。活動家は、集約畜産を可能にするとして遺伝子組み換えを批判するだろう。確かに、動物の密集飼育によって引きおこる病気などの問題を解決するために、多くの遺伝的革新が考案されたのは事実である。

さらに、米国における遺伝子組み換え食品動物の監督機関である米国食品医薬品局(FDA)から承認を得るのは容易ではない。FDAは、動物の遺伝子改変を動物用医薬品と同様に考えている。つまり、遺伝子改変が開発者の主張通りの結果をもたらし、動物にとっても人間にとっても安全であるという証拠が求められる。

とはいえ、最終的に遺伝子編集が生鮮売場 でどれほど通用するかを決めるのは、消費者と食品マーケティング担当者だ。「遺伝子操作済み」とラベル表示されたサーモンや豚肉を消費者は購入するだろうか? アクアバウンティの遺伝子組み換えサーモンの販売は、この問いの答えを導くかもしれない。アクアバウンティは、遺伝子操作済みラベル表示の義務付けに対して憤慨しており、アクアバウンティのサーモンは他社のサーモンと同じように優れていると主張している。それでもボボが言うように「透明性を保ち、人々が特に気にしないことを期待するのが一番です」。

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アントニオ レガラード [Antonio Regalado]米国版 医学生物学担当上級編集者
MIT Technology Reviewの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるかについて追いかけ、記事を書いています。2011年7月にMIT Technology Reviewに参画する以前はブラジルのサンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス誌や他の刊行物向けに記事を書いていました。2000年から2009年にかけては、ウォールストリートジャーナルで科学記者を務め、後半は海外特派員を務めていました。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

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