KADOKAWA Technology Review
×
フェイスブック、脳でARを操作できるリストバンドを開発
Facebook
Facebook is making a bracelet that lets you control computers with your brain

フェイスブック、脳でARを操作できるリストバンドを開発

フェイスブックは考えるだけでコンピューターを操作できるリストバンドを発表した。AR/VR技術へ積極的な投資を続けてきたフェイスブックは、スマートグラスやウェアラブルデバイスなどを相次いで投入する。 by Tanya Basu2021.03.23

フェイスブックは脳からの運動信号を変換し、考えるだけでデジタル・オブジェクトを操作できるリストバンドを開発したと発表した。

ストラップに不格好なアイポッドが付いたような見た目のこのリストバンドは、筋電位(EMG)センサーを使って、脳から手へ情報伝達する運動神経の電気的な活動を読み取る。フェイスブックによると、いまだ名称不明のこのデバイスを使うと、指で画面をスクロールしようと考えるだけで、拡張現実(AR)メニューを操作できるという。

ARは現実世界の視界にデータや地図、その他の画像などの情報を重ねて表示する技術だ。最も成功したARの実例として、2016年に一世を風靡した「ポケモンGO(Pokémon Go)」がある。ポケモンGOのプレイヤーたちは、捕まえにくいポケモンを探して、近隣地域を歩き回った。だが、この技術を魅力的で使いやすく、便利なものにできなかった結果、それから数年の間に当初有望視されていたAR普及の勢いは衰えていった。他にも、グーグル・グラス(Google Glass)やスナップス・ペクタクルズ(Snap Spectacles)も大失敗に終わった。人々は単純に、それらの製品を使いたいとは思わなかった。フェイスブックは、自社のリストバンドがよりユーザー・フレンドリーだと考えている。

フェイスブックの主張を判断するのは時期尚早だ。この製品は現時点で、社内のフェイスブック・リアリティ・ラボ(Facebook Reality Labs)で研究開発が進められている段階にあり、私はまだ実際に体験できていない。発売時期や値段もまだ明かされていない。

フェイスブックは2019年9月、スタートアップ企業のコントロールラボ(CTRL-labs)を5億~10億ドルで買収している。当時、コントロールラボは独自のリストバンド型EMGデバイスの開発に取り組んでいた。また、フェイスブック・リアリティ・ラボ 神経運動インターフェイス部門のトーマス・リアドン部門長は、コントロールラボの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めていた。リアドン部門長は報道機関向け発表会で、このリストバンドは「マインドコントロール(思考制御)ではありません」と述べた。「思考ではなく、運動情報を制御する脳部位からの信号を利用しています」。

ここのところ続くフェイスブックの発表の1つであるリストバンドの発表は、AR分野におけるフェイスブックの立ち位置をはっきりさせるものだ。3月9日には、身の回りのものに反応するスマート・グラスを発表した。例えば、お気に入りのコーヒーショップのそばを通り過ぎると、スマート・グラスがコーヒーを注文したいかどうか尋ねたりする。またフェイスブックは、触覚グローブなどのウェアラブル・デバイスを今年中に発表するとしている。

フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグは、ARと実質現実(VR)に積極的に投資してきた。このような製品が、無数の貴重なデータ・ポイントへのアクセスをもたらす可能性を認識しているからだ。コーヒーショップの例では、あなたがどのようなコーヒーが好きかやどこに住んでいるのかを見抜き、また統計的推論であなたの年齢層や健康状態、その他の個人情報をフェイスブックおよび広告主に知られる可能性がある。フェイスブックのプライバシーに関する過去を事案を考えれば、懐疑的にならざるを得ない。

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
ターニャ・バス [Tanya Basu]米国版 「人間とテクノロジー」担当上級記者
人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る