7月6日のことだった。中国南部・湖南省のドゥ・ファンミン家を、過去数十年で最大規模の地滑りが襲った。「家は倒壊し、飼っていたヤギたちは泥流に飲み込まれてしまいました」。ドゥは被災直後、中国メディアにこう語った。幸いにも、彼自身は難を逃れていた。最新鋭の測定が可能な高精度位置情報測位テクノロジーによる早期警戒情報のおかげで、他の32人の村人とともに避難していたからだ。
- この記事はマガジン「10 Breakthrough Technologies」に収録されています。 マガジンの紹介
新たに完成した中国の全球測位衛星システムである「北斗」(ベイドゥ)と地上局を使う位置センサーは、中国全土の地滑りが発生しやすい地域の地表の微妙な変化を検出できる。数メートル以上の動きであればリアルタイムで検出でき、後処理をした場合の精度はミリメートル・レベルに達する。
つまり、シャープペンシルのペン先ほどの地上の変化を上空21000キロメートル以上から検知できるということだ。地滑りが起こる12日前、ドゥの村はデータの異常に言及した警戒情報を受け取った。大雨が数日降った後に地滑りが起こりやすくなる可能性を示すものだった。
湖南省の100以上の地区では、こうした災害監視と早期警戒システムを導入している。「もし、衛星を基盤にした位置情報システムの精度がまだ数メートルや数10センチメートルのレベルだったら、このサービスは提供できなかったでしょう」と話すのは、北京市にある中国科学院の航空宇宙情報研究所で長年、北斗の研究開発に取り組んできたユアン・ホンだ。
人々はかつてないほど、所在地を測定したり物体の位置を正確に示したりできるテクノロジーに頼るようになってきている。精密農業やドローン宅配、物流管理、ライドシェア、航空旅行などはすべて、宇宙から測定される高精度の位置検出技術に依存している。現在、一連のサービス展開と技術の向上により、世界で最も強力な中国の全地球測位システムは、数メートルから数センチメートルへとその精度を高めている。
この技術によって、スマホであなたが現在どの通りを歩いたり自転車で走ったりしているかだけでなく、通りのどちら側を移動しているかまでわかるようになるかもしれない。将来的には、そうした高精度の技術によって、自動運転車や配達ロボットが道路や歩道を安全に移動できるようになるだろう。
GPSは進化し続けている
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